■「こうやって進歩する」

「ザ・ブレイベスト・ナイト」は批評家から絶賛されたが、フェイスブック(Facebook)の公式ページでは、米国内の宗教上の権利を訴える人々と番組を擁護するリベラルとの間で激しい議論が巻き起こった。

 カナダの番組プロデューサー、シャブナム・レザエイ(Shabnam Rezaei)氏は、南仏コートダジュール(French Riviera、フレンチリビエラ)のカンヌ(Cannes)で開催された子ども向けテレビ番組制作者らが集まる世界最大の見本市「MIPJunior」でAFPの取材に応じ、「こうやって進歩する。どのように感じたかを示し、論拠が明確であるのなら、私たちを攻撃したいというのはいいことだ。そういう会話をしようじゃないか」とし、このような議論を歓迎すると語った。

 レザエイ氏は、そのことについては話したくないとか、人に知られないようにしたいとか、こっそり捨ててふたをしてしまいたいとかいうことは、明らかに間違っていると強調する。「それが自己嫌悪と自殺を引き起こす」

 だが、イラン出身のレザエイ氏は「世界には、私が売り込みにいかない地域もある」とも認める。また、中東のあるプロデューサーはAFPに、大半のイスラム教の国ではそのような微妙な話題を取り上げるのは絶対に不可能だと語った。

 アジアの放送局もLGBTQの登場人物や混合家族が出てくる話に抵抗感を示すことが多い。また、フィンランドのヘルシンキを拠点とするサッチャー・マインズ(Thatcher Mines)氏は、ロシアには「同性愛宣伝禁止法」があり、これが自己検閲やそれ以上に悪い風潮につながっていると指摘した。

 ケニアは2017年、子ども向けアニメを多数禁止し、物議を醸した。当局は禁止の理由として、「道徳的判断を故意に堕落させ」「国内でLGBTを推進するため突拍子もないメッセージ」を伝えようとしたことを挙げている。

 子ども向け製品の調査会社ドゥビット(Dubit)の調査によると、英国のテレビで放送されたりストリーミング配信されたりした子ども向け番組のうち、LGBTQの登場人物が出てきたのはわずか7%にとどまっている。また、両親が同性である話は一つもなかった。

 就学前の子どもや児童向け多様性番組を手掛ける英BBCのプロデューサー、サリアン・カイザー(Sallyann Keizer)氏は「子どもは偏見を持たずに生まれてくる」と話す。同氏は、番組プロデューサーやエンターテインメント業界には、番組にさまざまなキャラクターを登場させ、少数派が無視されないように配慮する大きな責任があると語った。(c)AFP/Fiachra GIBBONS