【11月8日 AFP】香港出身のアクション映画俳優ジャッキー・チェン(Jackie Chan)さんが慈善団体の活動でベトナム訪問を予定していたところ、ネット上に抗議コメントが殺到し、訪問は急きょ取りやめになった。背景には、南シナ海(South China Sea)の係争海域をめぐってベトナム人が中国に抱く反発があるとみられる。

 チェンさんは今月10日、国際NGO「オペレーション・スマイル(Operation Smile)」の活動の一環でベトナムの首都ハノイを訪れる予定だった。オペレーション・スマイルは、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)の子どもたちに無料手術などの支援を行っている慈善団体だ。しかし、先週になってチェンさんの来訪が発表されると、オペレーション・スマイルの公式フェイスブック(Facebook)に怒りのコメントが殺到したため、チェンさんのベトナム訪問は中止となった。

 抗議コメントには、中国が資源豊富な南シナ海に領有権を主張する目的で独自に設定した境界線「九段線(nine-dash line)」を支持する発言をチェンさんがしていたと非難するものも複数あった。

 南シナ海の係争海域について、チェンさんが中国の主張を支持すると公言したことは一度もない。だが、オペレーション・スマイルは8日、謝罪声明を発表し、ベトナム国民の「反発を予測」できなかったことは落ち度だったと認めた上で、同団体の活動は「政治とは無関係」だと言明した。

 ベトナムは南シナ海の領有権争いをめぐり、最も声高に中国批判を展開している国の一つ。先月にも、映画中の一場面に九段線が描かれた地図が出てくるため、米中合作アニメ映画『アボミナブル(Abominable)』の一般公開が中止されている。(c)AFP