【11月9日 AFP】仏版アカデミー賞（Academy Awards）として知られるセザール賞（Cesar Awards）を2度受賞した女優が、12歳のときに初出演した映画の監督からセクシュアルハラスメント（性的嫌がらせ）を受けていたと告発し、これまでセクハラ告発運動「#MeToo（私も）」に消極的だった仏映画界に一石を投じている。

　女優のアデル・エネル（Adele Haenel）さん（30）は4日、ニュースサイト「メディアパルト（Mediapart）」がライブ配信したロングインタビューの中で、自身に執着していた監督に「無理やり首にキスをされ」「何度も体を触られた」と告発。社会で起きている虐待に目を向けるように人々に訴え、「モンスターは存在しない」「私たちが問題にしているのは、この社会。私たちの父親や友人、きょうだいたちのことだ。私たちがこのことに目を向けない限り、先には進めない」と語った。

　クリストフ・ルッジア（Christophe Ruggia）監督（54）は当初、エネルさんの告発内容を強く否定していたが、仏映画監督協会の除名処分を受け、「間違い」を犯したと6日に認めた。

　ルッジア監督は、「私が送った称賛や、彼女に寄せていた期待は、彼女の若さを考えれば（エネルさんを）悩ませていたのかもしれない」「そうだとしたら、許しを請いたい」とコメントしている。

　米ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン（Harvey Weinstein）被告に対するセクハラ告発を契機にした「#MeToo」運動で米映画界には2年前に激震が走ったが、仏映画界ではこの運動は盛り上がらず、カンヌ国際映画祭（Cannes Film Festival）で同被告からセクハラを受けたとの告発があったにもかかわらず、反応は薄かった。

　しかし今、エネルさんを支持する声が前例のない勢いで広がり、放任主義をよしとしてきたフランスの姿勢に変化が生まれる可能性が出てきている。