【11月8日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の弾劾調査で、同氏がウクライナ政府に圧力をかけて自身の選挙戦を有利に運ぼうとした行動は両国の「法の支配」を脅かすと米国務省の高官が考え、省内では懸念と抵抗があったことが7日、新たに公開された証言内容から明らかになった。

 弾劾調査の公聴会が来週始まるのに先駆けて公開されたジョージ・ケント(George Kent)国務副次官補の証言は、トランプ氏の職権乱用と選挙法違反の疑惑をめぐる新たな証拠となる。

 ケント氏は、トランプ氏が2020年大統領選で対抗馬と目される民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領と息子の汚職調査をウクライナに働き掛けた際、中心的役割を担ったのはトランプ氏の顧問弁護士のルドルフ・ジュリアーニ(Rudy Giuliani)氏だったとも指摘している。

 ケント氏は先月15日、下院情報特別委員会で証言。ホワイトハウス(White House)がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領に調査を開始させようと圧力をかけたのは、バイデン氏親子に不正行為があると示唆するもので、米国の対ウクライナ政策を損ないかねない行為だったとの考えを表明した。

 ゼレンスキー氏がトランプ氏の望みをかなえることと、米国の対ウクライナ軍事支援とに「リンケージ(連係)」があることを8月中旬に知ったケント氏は、正式な国務省文書で懸念を指摘。「政治的動機に基づいた告発を行う動きがあり、米ウクライナ両国の法の支配を損ねる懸念があると記した」と証言した。

 ケント氏はその上で、米政府はそのような要求を行うべきではないと証言。「なぜならそれは、われわれが旧ソ連圏諸国で28年間にわたり奨励しようとしてきたあらゆること、すなわち法の支配の促進に反しているからだ」と述べたという。

■弾劾調査、焦点は3つ

 弾劾調査を率いる下院情報特別委員会のアダム・シフ(Adam Schiff)委員長(民主党)は7日、来週の公聴会で焦点となる質問3項目を議員向け書簡で提示した。

・トランプ氏が、2020年大統領選で対抗馬となり得る人物の調査など、自身の政治的利益のために外国の首脳や政府の支援を求めたかどうか。

・トランプ氏が、支援を保留するなど職権を利用してゼレンスキー氏に圧力をかけ、自らの政治的利益を得ようとしたかどうか。

・トランプ氏が米議会の調査妨害や、自身の振る舞いに関する証拠について明かさなかったり、隠蔽したりしようとしたかどうか。(c)AFP/Paul HANDLEY