【10月28日 東方新報】中国の国家公務員試験“国考”シーズンが始まった。2020年度採用となる今年の国考は、国家公務員法改正後初の募集にあたり、中央・国家関連の86機関および23の直轄機関で2万4000人の募集枠がある。これは前年度より1万4000人の大幅増員だ。10月15日から試験への応募が始まり、24日までに約140万人が応募。応募数は例年なみだが、募集枠の拡大で、競争率は相対的にかなり低くなった。

 とはいうものの、競争率1000倍以上という狭き門の職位も複数ある。最も人気が集中したのは「中央档案館(文書館)档案局中国第一歴史档案館複製処一休主任科職員」で、募集1枠に対して1109人が応募、档案局第二歴史档案管安保処一級主任科員、国家市場監督管理総局計量司総合処一級主任科員の職位も募集1枠にそれぞれ1074人、1015人が応募した。

 一方、誰も応募しなかった職位も240以上にのぼった。甘粛省(Gansu)消防救援総隊所属消防救援支隊基層指揮員や国家統計局広西(Guangxi)調査総隊合浦調査隊一級科員、ハルビン(Harbin)鉄道公安局ハイラル鉄道公安処線路警務区民警などは一人も応募者がおらず、僻地勤務地や職務環境が厳しいもの、応募条件が厳しいものが敬遠されているようだ。

 一般的に経済が悪化すると、収入が安定した国家公務員には応募者が殺到するもので、企業の倒産と失業の嵐が吹き荒れた2018年度の“国考”には166万人が応募し、空前の激戦となった。今年は経済が急減速しているにもかかわらず、比較的落ち着いているのは、例年に比べて国考の募集条件が厳しくなったからかもしれない。

 まず、例年になく政治的要求、政治的信条に対する審査が厳しくなった。「習近平新時代の特色ある社会主義指導思想」をよく学び、政治的立場や意思表明とともに素質や道徳、品格が一層強く求められるようになった。次に農村や軍隊など基層社会での職務経験が重視されるようになった。11月24日には筆記試験が行われるが、学力そのものへの評価よりも、政治姿勢や僻地、貧困地で働いた経験を重視した傾斜採点が採用されるようになった。

 さらに公務員の分類改革が進められて、中国銀行保険監督管理委員会や中国証券監督管理委員会といった中央一級公務員に対しては筆記試験検査、身体検査、さまざまな考察を加えて、よりハイレベルな人材を科学的精確な根拠をもって採用するとしている。

 相変わらず汚職の取り締まりは厳しく、倫理や道徳も一般企業以上に求められる公務員は、もはや楽して高待遇で賄賂などのうまみのある職業というイメージはなくなっている。 (c)東方新報/AFPBB News