【10月23日 AFP】英イングランドとウェールズで有機農業に全面移行した場合、生産量が減少してより多くの生産地が必要となるため、結果として温室効果ガスの排出量は増加するという研究論文が22日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

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 有機農法に転換することで、食品ごとの温室効果ガス排出量は農作物で最大20%、畜産物で最大4%削減できる一方、生産スピードを速める肥料を使用しないために、農業や畜産業の非効率化につながる。

 英クランフィールド大学(Cranfield University)の研究チームによると、イングランドとウェールズで窒素肥料の使用をやめて有機農業に完全移行した場合、農業で直接排出される温室効果ガスの量は減るという。

 一方で生産量が最大40%減少し、この穴埋めとしてより多くの牧場と農地が必要となることから、結果として温室効果ガス排出量の増加につながるとしている。

 農業分野で発生する温室効果ガスの量は、全世界で人間が排出する温室効果ガス量の4分の1超を占めている。また、近年注目を浴びている複数の報告書は、持続不可能な大規模農業が、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」の目標達成を脅かすと警告している。

 論文執筆者らは、英国が有機農業に完全移行する場合、温室効果ガス排出量の全体的な削減は「全国民の食生活における大変化」が伴う場合にのみ達成できると指摘した。(c)AFP