【10月13日 AFP】シリア北東部で越境軍事作戦を展開するトルコ軍は、国際的な非難や米国の制裁警告にもかかわらず、クルド人勢力への攻勢を強めている。11日には、戦略的要所となる国境の町ラスアルアイン(Ras al-Ain)に侵攻した。

 トルコ軍とシリアの親トルコ派民兵らは、前夜からクルド人部隊と戦闘を繰り広げた末、ラスアルアインに入ったと、トルコとクルド人勢力双方が明らかにした。ラスアルアインは、トルコが軍事作開始から4日目で初めて掌握したクルド人支配地域の町。トルコ国防省はこれをラスアルアイン陥落と称賛した。

 一方、現地のクルド人防衛勢力はラスアルアインの陥落を否定。現地のAFP記者も、トルコ側の部隊がラスアルアインに入ったのは事実だが、掌握には至っていないと話している。

■トルコ軍が圧倒的に優勢

 クルド人を主体とする民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は、シリアのイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦における地上戦の主要勢力として米軍に協力してきた。このためSDFは、米国にはSDFを守る「道義的責任」があるとして支援を求めた。だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、トルコ・シリア国境地域からの米軍撤退を指示。トルコの越境軍事作戦開始を容認し、忠実な協力者を見捨てたとして、トランプ氏は国内の支持者からも非難の集中砲火を浴びている。

 英国に拠点を置くNGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、同様にトルコ軍が越境軍事作戦の主要目標とする国境の町テルアビヤド(Tal Abyad)近郊で11日、民間人少なくとも9人が親トルコ派の民兵組織に「処刑」された。9人には、クルド政党の女性幹部とその運転手が含まれているという。

 戦闘では、兵器の攻撃能力でトルコ軍が圧倒的優位に立っており、SDF側の兵士に犠牲者が増え続けている。

 シリア人権監視団によると、11日の戦闘におけるSDF側の死者は少なくとも23人。トルコが9日に軍事作戦を開始して以来、クルド人兵士の総死者数は81人となり、クルド側は勢力下にあった27の村を失った。これに対し、トルコの国防省と半国営アナトリア(Anadolu)通信によると、同時期のトルコ軍側の死者は4人。

■民間人も犠牲に、10万人が避難

 トルコ軍による空爆やクルド人勢力の激しい反撃で、国境をはさんだ双方の民間人にも犠牲者が出ている。

 人権監視団によると、国境のシリア側で民間人少なくとも38人が死亡。またトルコメディアは、クルド人勢力の砲撃によってトルコ側で民間人18人が死亡したと報じた。

 トルコ政府は、越境軍事作戦の目標は、アラブ系シリア人を主とした親トルコ勢力が管轄する安全地帯をシリア内に設置し、アラブ系シリア難民360万人の一部を再定住させることだと主張。これに対しSDFは、トルコの軍事侵攻の狙いは、クルド人の犠牲の上に地域の民族地図を書き換えることだと反論している。

 国連(UN)によれば、トルコの越境作戦によって、既に10万人が避難を余儀なくされている。(c)AFP/Nazeer al-Khatib in Ras al-Ain and Delil Souleiman in Tal Tamr