【10月11日 AFP】トルコ軍がシリア北部で軍事作戦を開始したことを受け、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は9日、同地域で拘束されているイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員のうち、特に危険な人物を米国が引き受けると表明した。

 こうした戦闘員らは現在、クルド人を主体とする民兵組織「シリア民主軍(SDF)」が拘束している。米国による一部の引き受けが決まったことにより、IS戦闘員らが釈放される事態は回避されたが、米国や有志連合国に対しては、IS戦闘員らの裁判を開くよう求める圧力が強まった。

 米国が引き取ったIS戦闘員には、人質の斬首に関与していた英国出身の戦闘員4人のうちの2人も含まれている。この4人は、「ビートルズ(The Beatles)」としても知られている。複数の報道によると、SDFのキャンプからIS戦闘員が逃げ出すのを防ぐため、米軍はIS戦闘員数十人を引き受ける予定だという。

 今年初めに米主導の有志連合がISを掃討した後、IS戦闘員を拘束しているのはSDFだ。その数は外国人戦闘員2000人、シリア人戦闘員8000人に上ると推定されている。今回、米国が引き受けを表明したことを受けて、拘束されているIS戦闘員の処遇問題の解決が加速される可能性も出てきた。

 こうした状況の中、フランスのジャンイブ・ルドリアン(Jean-Yves Le Drian)外相は3日、拘束されているIS戦闘員問題について協議するため、有志連合に緊急会合を呼び掛けた。

■国内混乱の恐れ…引き受け拒否

 トルコ軍からの攻撃を受け、IS戦闘員を拘束しているキャンプを放棄せざるを得ないとしたSDFの言葉を脅威ととらえ、米国は今回、最も危険な戦闘員らの確保と隔離に動いた。

 トランプ氏は9日、「クルド人またはトルコが制御できなくなった場合に備え、米国はビートルズの名で知られるシリアでの斬首に関わった2人のIS戦闘員を既に拘束している。(2人は)シリア国外の米国が管理する安全な場所にいる」とツイッター(Twitter)への投稿で述べた。

 2人は、米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー(James Foley)氏とスティーブン・ソトロフ(Steven Sotloff)氏、人道支援従事者のピーター・カッシグ(Peter Kassig)氏の殺害容疑で、米国で裁判に掛けられる見通しだ。

 英国はこれら2人のIS戦闘員、アレクサンダ・コーティ(Alexanda Kotey)容疑者とシャフィ・シェイク(El Shafee Elsheikh)容疑者について、国内に混乱を招く恐れがあるとして引き受けを拒否している。

 ある米当局者は、場所は明かさなかったものの「彼らはシリアを出国し、安全な場所にいる」と認め、「戦時法にのっとって軍が拘束している」と話した。