【11月3日 AFP】コロンビア北部モンテスデマリア(Montes de Maria)の山岳地域にあるチェンゲ(Chengue)村で、防護服に身を包んだジーナ・オルティス(Yina Ortiz)さん(33)がのぞき込むのは、村内に数百と置かれた養蜂箱だ──。内戦中、凄惨(せいさん)な残虐行為があったこの村では現在、人々が過去に受けた傷を癒やすのにミツバチが一役買っている。

 18年前のある深夜、オルティスさんの村は右翼民兵組織に襲撃された。左翼ゲリラと共謀したと非難され、27人が山刀で殺害された。

 事件発生当時、オルティスさんはまだ未成年だった。自らは助かったが、家族や親友ら数人が命を落とした。

 今でもその時の記憶はしっかりと残っている。事件翌日に見た、道に横たわる遺体の記憶は特に鮮明だという。「とても恐ろしい光景だった。多くの遺体が重なるように地面に横たわっていて、親族らが捜しにきていた」

 その襲撃がきっかけで100世帯以上が村から逃げ出し、村は廃虚と化した。

 だが、20年近くが経過し、荒れ果てた村には人が戻り始めている。その理由の一つはミツバチだ。オルティスさんと地元の女性グループが協力し、村で養蜂を行うプロジェクトを立ち上げたのだ。今のところ、プロジェクトは順調に進んでいる。

「養蜂のおかげで人々は団結した。村に戻り、ミツバチの世話を楽しんでいる」と、オルティスさんはミツバチをおとなしくさせるための薫蒸器を使いながら話した。

 この1年間、チェンゲで暮らす159家族は農作業と養蜂を交互に行っている。500個の養蜂箱は、内戦の生存者を対象とする共同プログラムの一環として政府と国連(UN)から寄付された。

 オルティスさんは、「私たちには傷を癒やす必要があった。そして、今はミツバチのおかげで人々は戻り、ミツバチの世話を楽しみ、その生態を研究している」と村の現状について話した。(c)AFP/Diego LEGRAND