【10月19日 AFP】大統領候補を辱める加工動画、電子投票システムに対するランサムウエア攻撃、電子投票記録が紙でバックアップされていない――これらは2020年の米大統領選におけるサイバー上の脅威となっており、選挙結果が不正なものになるのではないかと懸念する声が上がっている。

 懸念が高まるようになったのは、2016年の大統領選でロシアがフェイスブック(Facebook)などのSNSで偽情報を大々的に展開していたことが発覚してからだ。

 米スタンフォード大学(Stanford University)のサイバー政策センター(Cyber Policy Center)は報告書で、サイバー攻撃を通じた選挙干渉や偽情報の拡散は「世界各地の民主主義に対する非常に大きな、そして今なお続く脅威の一部を成している」と指摘している。

■最新の脅威はディープフェイク

 そうした中でも最新の脅威は、「ディープフェイク」の動画や音声かもしれない。これは、候補者があたかも実際に話したかのように人工知能(AI)で加工したものだ。

「女性やマイノリティー(少数派)を支援する候補者の信用を落とすため、実際より印象を悪くし、中傷する動画」を作ることさえ可能だと、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)技術革新センター(Center for Technology Innovation)のダレル・ウエスト(Darrell West)氏はオンライン報告書で説明している。

 ボストン大学(Boston University)のオンラインセキュリティーの専門家ダニエル・シトロン(Danielle Citron)氏は7月の「TEDサミット(TedSummit)」で、ディープフェイクは「政治家や実業界のリーダー、その他の影響力のある指導者に対して人々が抱いている不信感を悪用し、それを強めることができる」と指摘した。

 また、米首都ワシントンを拠点とするセンター・フォー・デモクラシー&テクノロジー(Center for Democracy & Technology)の選挙のセキュリティーに関する専門家モーリス・ターナー(Maurice Turner)氏は、ディープフェイクは偽りであることが証明されたとしても、「その情報を信じたがっている人の考えを強固なものとし、ニュースそのものを妨害できる」と語った。