【9月19日 AFP】人の健康状態に生涯にわたって影響を及ぼす複雑な腸内生態系の形成に、出産の方法が大きくかかわっている可能性があることが最新の研究で明らかになった。

 19日に発表された研究によると、帝王切開で生まれる新生児は産道を通る自然分娩(ぶんべん)児に比べて、母親からもたらされる腸内細菌が少なく、病院内環境から取り込まれる細菌が多かったという。

 研究ではまた、出産時に母親が抗生物質を服用していた場合とそうでないとでは、新生児にみられるヒト常在細菌叢(そう、マイクロバイオーム)として知られる腸内環境に違いがあることも分かった。研究は7年にわたって行われたという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文の執筆者らは、今回の研究を通じて、出産が腸内細菌によって構築されるヒト免疫系のその後を決定付ける時期だという証拠を得られる可能性もあると考えているという。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)のナイジェル・フィールド(Nigel Field)臨床准教授は、今回の研究の発表会で「われわれの仮説は、出産の期間は免疫系にとっての感温期なのかもしれないというものだ。(中略)これにより、生涯にわたる免疫系が『確立』される」と説明した。

 なお、新生児の腸内細菌の違いは離乳までに消失した。そのため常在細菌叢の変化が、帝王切開児により多くみられる小児期の病気に関連している明確な証拠はまだ得られていない。

■便と血液サンプルを精査

 英国の母親と新生児を対象とした研究では、便と血液のサンプル数万件が調べられた。サンプルは数週間後、数か月後にも継続して採取され、出生初期の新生児の腸内に存在する細菌の種類について、かつてないほど詳細な調査が行われた。

 その結果、自然分娩児は母親の腸内に生息する細菌を獲得している一方、帝王切開児は病院に由来する「日和見病原菌」が定着していることが判明した。日和見病原菌は直ちに害を及ぼすわけではないが、免疫系が低下したり細菌が体の他の部位に移動したりした場合に病気を引き起こす恐れがある。