【9月16日 AFP】夜半過ぎに兵士らがやってきた──インドとパキスタンとが領有権を争うカシミール(Kashmir)地方のインド側支配地域で暮らすアビド・カーン(Abid Khan)さん(26)は、手を震わせながらそう話す。

【図解】カシミール地方の実効支配線と各国の実効支配地域

 長らく反政府運動が続き、血まみれの過去を持つジャム・カシミール(Jammu and Kashmir)州は先月5日、インド政府によって自治権を剥奪された。

 インド側のカシミール地方で続く反政府運動について同国政府は、1947年から同地方のもう一方を支配するパキスタンが支援していると主張。反政府運動では1989年以降、数万人が亡くなり、そのほとんどが一般市民とされる。

 カシミール渓谷(Kashmir Valley)の南部地方を構成する4県の一つ、ショピアン(Shopian)県に住むカーンさんは、同県だけでも20人を超えるという、インド軍から拷問を受けたと証言する若者の一人だ。

 若者らが主張する拷問について住民らは、恐れの空気を醸成することを狙ったものだと指摘する。

 カーンさんは8月14日、学習困難があるきょうだいと一緒に外に引きずり出され、目隠しされたという。

 カーンさんはAFPの取材に対し、きょうだいの腕や脚、尻に残る痕を見せながら「彼らはすぐ外の路上できょうだいに電気ショックを加えた。彼が痛みで叫び声を上げるのを聞いた」と話した。

 さらにその後、村近くにあるチョウガム(Chowgam)軍事基地で、兵士らはカーンさんを裸にし、脚と手首を縛ってつるした上で、棒を使って殴打したという。

 カーンさんによると、基地の幹部はカーンさんが最近行われた自身の結婚式に、同州を統治するインドと戦う武装組織の一つ「ヒズブル・ムジャヒディン(Hizbul Mujahideen)」のメンバーを招待したと疑っていたという。

 カーンさんは「繰り返しそれは事実ではないと話した」ものの、「その後、彼らは私の性器と傷に電気ショックを加えた。一人は私に『(性的)不能にしてやる』と言った」と話す。

 別の村で暮らすオベイド・カーン(Obaid Khan)さん(21)は身分証と携帯電話を引き取るため、8月26日にこの基地を訪れたところ、「兵士8人が長い時間、私を棒で殴り続けた」。さらに兵士らは、治安部隊と衝突したデモ参加者について言及。「解放される前に、村人の中で投石していた者の名前を調べてこいと言われた」という。

 ピンジョーラ(Pinjoora)村の当局者はAFPの取材に対し、警察と軍に拘束されているショピアン県民1800人のリストを目にしたことがあると述べている。

 この当局者は、ショピアン県内の町にある自宅から遠くないところで、アサルトライフルを抱え、袖に「特殊部隊」と記された黒服姿の兵士5人が、住民についての詳細な情報を探しながら、家々の中に入っていったと説明。「私に言えることは人々に抗議デモを防ぐために圧力がかかっているということだけだ」と話す。

 そして、それは実際に功を奏している。

「8月5日以降、兵士への投石は起きていない」とこの当局者は付け加えた。(c)AFP/Parvaiz BUKHARI