【9月22日 AFP】米ケーブルテレビ局HBOの人気ドラマ「チェルノブイリ(Chernobyl)」の影響で、史上最悪の原発事故が起きたチェルノブイリ周辺を訪れる若い世代の観光客が増えている。だがツアーガイドらは、多くの客は原発事故について学ぶより自撮りに夢中だと話す。

 AFPの取材に応じた公式ガイドのイェウゲン・ゴンチャレンコ(Yevgen Goncharenko)さんは、「ツアー客は情報を必要としていない。ただ自撮りしたいだけだ」と話す。

 アカデミー賞(Academy Awards)のテレビ版に当たるプライムタイム・エミー賞(Primetime Emmy Awards)の19部門にノミネートされている「チェルノブイリ」は、1986年4月に旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所の原子炉1基で実験中に起きた事故を再現している。

 爆発により、欧州の広範囲に放射性物質が放出され、原発の半径30キロ圏内は今も立ち入り禁止になっている。その一部地域は近年、観光客に解放されており、ドラマが放映される前から「ダークツーリズム」の対象になってきた。

 地元旅行会社の中には、ドラマのロケ地巡りをするツアーを実施し、立ち入り禁止区域周辺の川でカヤックを楽しめる特別ツアーを提供しているところもある。

 チェルノブイリ情報センター(Chernobyl information centre)の代表オレクサンドル・シロタ(Oleksandr Syrota)氏は、一部の旅行会社は、原発事故が起きた地域周辺で「ファストフード」のようにさっとお手軽に旅行体験を味わえる旅行プランを提供していると話す。

 旅行客の増加傾向は今後も確実に続くとみられている。5月に大統領に就任したウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)氏は7月、チェルノブイリ原発周辺を観光地としてさらに開発する大統領令に署名した。