【8月30日 AFP】ロシアで29日に公開された宇宙服の新デザインが、宇宙飛行士がロケット搭乗前に伝統として行っている「放尿の儀式」に適さないとの指摘を受け、変更を余儀なくされる可能性が生じている。

 29日にモスクワ郊外で行われた航空ショーでは、ロシアの最新宇宙服「Sokol-M」の試作版が披露された。国際宇宙ステーション(ISS)で活動する宇宙飛行士らが、ロシアの宇宙船「ソユーズ(Soyuz)」打ち上げの際に着用する宇宙服は将来、この新しいデザインとなる予定だ。

 宇宙服を製造するロシア企業「ズベズダ(Zvezda)」はSokol-Mについて、「新素材」でさまざまな体形に適応できると述べた。現在、宇宙服は各飛行士の体形にあわせて作る必要がある。

 しかし、新しい宇宙服は、人類初の宇宙飛行を行った旧ソ連のユーリ・ガガーリン(Yury Gagarin)飛行士が始めた、ある特別な儀式を行うことができないデザインとなっている。

 ガガーリン飛行士は1961年、バスで宇宙船の発射台へ到着すると、そのバスの後輪に放尿した。以来、バイコヌール宇宙基地(Baikonur Cosmodrome)からの打ち上げでは、男性飛行士が搭乗前に幸運を願ってバスの後輪に放尿するのが伝統となっている。女性飛行士らはこの儀式に参加する必要はないとされているが、中には小瓶に自分の尿を入れて持参し、タイヤの上にかける女性飛行士もいた。

 現在使われている白い宇宙服「Sokol-K」のジッパーは、股の部分に向かってV字形に開くようになっている。一方、明るいオレンジ色の新宇宙服Sokol-Mは、斜めに走るジッパーが一つ取り付けられているだけで、この放尿の儀式ができないという。

 ソユーズの打ち上げの際には、さまざまな儀式が伴う。例えばバイコヌールに植林すること、髪を切ること、旧ソ連の映画『砂漠の白い太陽(White Sun of the Desert)』を見ること、ロシア正教の司祭に聖水を掛けてもらうことなどがある。だが1960年代から運用されてきたソユーズシリーズも、今後数年のうちに新型宇宙船「フェデレーション(Federation」に引き継がれる。(c)AFP