【8月23日 AFP】香港から飛行機で9時間離れた南半球のオーストラリア。だが、ここオーストラリアの大学のキャンパスでも、香港で続く抗議デモの問題を避けることは不可能だ。大学内にごまんといる中国人学生の一人に、香港の混乱をどう思うか尋ねてみるといい。不安そうな顔をされるか、礼儀正しく沈黙されるかのどちらかだろう。ある中国人学生は、香港について質問されるのが「怖い」と語った。

 豪大学のキャンパスでは、しばしば民主派支持の学生と親中派の学生が暴力的に衝突。侮辱的な言葉や殺すなどと脅しの文句をぶつけ合い、ソーシャルメディアも荒れまくっている。話を聞いた大半の中国人学生たちは申し訳なさそうに、香港のことを話すのは危険すぎると答えた。だが、中には匿名を条件に積極的に語ろうとする学生もいる。

 香港から2時間の距離にある中国本土の都市から来た「アンディ」さんは、仲間のほとんどは民主派、親中派のどちらにも巻き込まれたくないと思っているとAFPに語った。「僕たちは学ぶためにオーストラリアに来ているんです。抗議するためじゃない。どんな形でも勉強の妨げになることには関わりたくありません」

 一方、ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)で学ぶ香港出身のジョンソンさんは、中国人学生コミュニティーが香港の抗議学生支持派と政府支持派に二極化していると危惧する。「口論の内容が過激化している」

■中国人学生たちは板挟み状態

 こうした状況について、シドニー工科大学(University of Technology Sydney)のジェームズ・ローレンスソン(James Laurenceson)教授は、中国人学生たちは板挟み状態に追い込まれていると指摘。香港の抗議デモに批判的なことを語れば中国共産党の回し者扱いされ、香港デモへの支持を表明すれば愛国主義的な中国人学生から非難されると恐れているのだ。

 ローレンスソン氏は、中国人学生たちが仲間の誰かや中国共産党関係者に監視されている可能性もあり、彼らの「懸念」もまっとうなものだと説明した。オーストラリアで中国共産党の見解と異なる意見を述べたために、中国本土にいる家族が当局者の訪問を受け「お茶」に誘われたという中国人留学生たちの話を、ローレンスソン氏も大学の知り合いから聞いたという。

 ローレンスソン氏によれば、一部の過激な愛国主義的学生たちは中国本土出身の学生にも嫌がらせや中傷を行っている。こうした愛国的なグループは民主派のポスターを破ったり、デモ参加者を脅迫したりしているが、そうした出来事の件数から判断して、過激な行動に走っているのはせいぜい20人から30人程度だという。(c)AFP/Joseph OLBRYCHT PALMER