【8月12日 AFP】香港で続く民主派の抗議デモの余波が、オーストラリアの大学に広がっている。デモ隊を支持する学生たちが、「愛国的」な中国本土出身の学生たちによる攻撃や嫌がらせの標的となっているのだ。中国政府が裏でこうした学生らを支援しているとみられている。

 オーストラリア各地の大学では香港の民主派に連帯を示す集会や運動が展開され、言論の自由と民主主義をたたえるメッセージを書いた付箋をはりつけた、いわゆる「レノンウォール」も各所に出現している。

 しかし、これに怒った中国本土出身の一部の学生らがレノンウォールを破壊したり、デモを支持する運動に参加している学生らともみ合いになったり、母国を「侮辱する」政治的な主張から解放された「純粋な学習環境」を提供するよう大学当局に要求したりするようになった。

 メルボルンのモナシュ大学(Monash University)で6日に行われた小規模な民主派デモでは、参加した学生らを激しい口調で怒鳴りつける男性の姿が映像に捉えられている。この男性は止めに入った人を乱暴に押しのけ、それらの様子を男性の仲間が動画撮影していた。

 この騒ぎを目撃した学生(23)は、「彼らは写真を撮ってソーシャルメディアに掲載し、僕らの身元を特定しようとしている。それが分かっているから僕らはマスクをしているんだ」と話した。

 中国のソーシャルメディア「微信(ウィーチャット、WeChat)」では、愛国主義活動家らが香港を支持するデモに参加した学生のメルボルンの自宅住所をさらし、学生らを支持した本土出身の中国人らが帰国した際は「福祉」のために中国当局に通報しようなどと議論する事態も起きている。

 ブリスベン(Brisbane)のクイーンズランド大学(University of Queensland)では、大学構内でのデモ開催を支援してきた学生活動家が「気をつけろ」と警告されたり、自分の名前を知っている何者かから、居場所は分かっている、家族を殺すなどと脅迫メッセージを受け取ったりしたという。

 大学構内や街中で身の危険を感じるという別の学生は、「たぶん香港政府や、中国政府でさえも、僕らがここで何をしているか把握していて、身柄を拘束しようとしているのではないか。皆それをとても恐れている」と語った。

 こうした緊張はニュージーランドにも波及し、オークランド大学(University of Auckland)でも小競り合いが発生している。(c)AFP / Holly ROBERTSON, Andrew BEATTY