【8月2日 AFP】7月のフランス・パリは記録的な猛暑に見舞われたが、そのさなかにも市内各地の観光名所では訪れた観光客たちが涼を満喫していた。それが、地下に張り巡らされた迷路のような送水管ネットワークの恩恵だということも知らずに。

 気候変動によって暑い季節は年々、長引くと予想されている。こうした中、「地区冷却ネットワーク」と呼ばれる送水管システムこそ、エアコンに代わる地球に優しい冷房だとして推進する人々がいる。

 パリの地下には全長約80キロに及ぶ冷却管がくねり、エネルギー企業各社が巨大な貯水槽から地下の中継センターへ、そして地上のビルへとキンキンに冷えた水をくみ上げている。この冷房システムの顧客は約700団体。議会やルーブル美術館(Louvre Museum)、レストラン「ロテル・ド・ヴィル(l'Hotel de Ville)」、高級百貨店ギャラリー・ラファイエット(Galeries Lafayette)など、パリ観光に欠かせない名所も含まれる。

 水源は、地下水とセーヌ(Seine)川だ。システムの稼働に電気は必要だが、エアコンに比べればずっと効率的で、汚染も少ないとサービスを提供する企業はうたっている。

 地区冷却ネットワークの提供企業の一つ、「クライムスペース(Climespace)」の運用責任者は、「1メガワットの使用電力で4メガワット分の冷房効果をもたらす」と説明した。従来のエアコンより2倍、効率が良いことになる。

 現在、地球上では約16億台のエアコンが稼働しているとされる。その数は2050年までに爆発的に増加し、56億台に達する見通しだ。地球上に生きる人間の2人に1人がエアコンを持つ時代が来る。

 パリ西郊のブローニュビヤンクール(Boulogne-Billancourt)には、地区冷却ネットワーク提供企業の「イデックス(Idex)」の設備がある。自動車大手ルノー(Renault)の元工場に全長6キロの冷却管がうねり、地熱エネルギーを利用して、年間を通じて水温15度程度を保っている大量の地下水を温めたり冷やしたりしている。温水は暖房やシャワーに、約4度に冷やされた水はパリ地下を走る冷却ネットワークに活用される。

 導入コストは6500万ユーロ(約77億円)と巨額だ。だが、冷却ネットワークを推進する業界団体のギヨーム・プランショ(Guillaume Planchot)会長は、初期投資に十分値するコストだとの見方を示し、「残念ながら、今世紀は温暖化の世紀だ。そして、こうした種類のシステムをつくり出す世紀になる」と述べた。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS