【7月23日 AFP】英国当局は夏休みを前に、強制結婚を防ぐ取り組みに力を入れている。このほど英ヒースロー空港(Heathrow Airport)の到着ゲートで、警察、国境警備隊、慈善団体職員で構成された特別捜査隊が取り締まりを実施する様子をAFPが取材した。

 英国では2014年に強制結婚が違法となり、違反した場合、最高7年の禁錮が科される可能性がある。英国籍を持つ人々が自分の意思に反して強制結婚させられるケースは、主にバングラデシュ、インド、パキスタンで起きることが多い。このため特別捜査隊は、中東のハブ空港とインド半島諸国の空港の発着便の乗客を中心に取り締まりを実施している。 

 特別捜査隊はこの日、インドのベンガルール(Bengaluru、旧称バンガロール)からエア・インディア(Air India)で到着した乗客250人のうち75人に職務質問を行った。

 その中で、ある一家の中にいた少女(13)が赤信号を発していた。腕に複数のあざがあり、見るからにびくびくしている。あざと極度におびえた態度は強制結婚の可能性を示す特徴だ。

 家族に個別に質問すると、英国訪問は葬儀に出席するためで、少女のあざは交通事故が原因だったことが判明した。一方で両親は、少女の婚約者をインドの地元ケララ(Kerala)州で見つけたばかりであることも分かった。警察官らは少女を脇に連れて行き、人権について短く説明するとともに、強制結婚は英国では違法であることを伝えた。

 英内務省の統計によると、2018年の強制結婚は前年比47%増の1764組だった。だが、これは氷山の一角だと考えられている。

 強制結婚の被害者の3分の1は18歳未満で、4分の3は少女もしくは成人女性だ。

 だが、ロンドン警視庁(Metropolitan Police ServiceScotland Yard)の刑事巡査部長トルーディ・ギッティンズ(Trudy Gittins)氏によると、男性やLGBT(性的少数者)も強制結婚の犠牲になることがある。例えば、同性愛者の男性が、保守的な家族に女性と強制的に結婚させられるケースもあるという。

 英国内で発生した強制結婚では、2歳の少女が宗教的な儀式で結婚を誓わされたり、80歳のアルツハイマー病患者が、遺産相続目当ての介護人に強制的に結婚させられたりした例がある。(c)AFP/Joe JACKSON