【7月15日 AFP】中国競泳界のエース孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)が、ドーピング検査を妨害していた疑惑をつづった暴露報道がなされたことを受けて、国際水泳連盟(FINA)は14日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)による審理が9月に行われることを明かした。

 豪紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)にリークされたFINAのドーピングパネルによる報告書では、孫楊が血液サンプルを金づちで破壊するなどした妨害の経緯が記されているが、それにもかかわらず同選手には、次週から競泳種目が始まる世界水泳選手権(FINA World Championships)への出場許可が出ている。

 FINAは規則を半ば強引に解釈しておとがめなしとの判断を下したが、この決定に対して世界反ドーピング機関(WADA)はCASに異議申し立てを行っている。しかし申請から4か月が経つ今も、審理の具体的な日取りすら定まっていない。

 こうした状況の中で、FINAのコーネル・マルクレスク(Cornel Marculescu)事務総長は連盟の姿勢を擁護しながら、次のように語った。

「大きな打撃だ」「どういった経緯で、今回のような機密文書が世界に向けて公開されたのか分からない」「しかし状況は非常にシンプルだ。われわれにはFINAのドーピングパネルが下した決断があるし、パネルは完全なる第三者で構成されている」

「ルール上、WADAには異議を申し立てる権利があるし、実際にそうしている。そしてCASは9月のどこかで審理を行う予定だから、われわれとしては経過を見守りたい」

 デーリー・テレグラフ紙が入手したという衝撃的な内容の報告書によれば、孫楊は2018年9月に浙江(Zhejiang)省の別荘で行われた抜き打ち検査で、採取された血液サンプルを警備員と一緒に壊したという。

 CASがWADAの異議を認め、違反があったと判断した場合、孫楊は2014年に禁止されている興奮剤を使用して3か月の出場停止を科されているため、今回は永久追放の処分が下る可能性もある。

 しかしマルクレスク事務総長は、今回のパネルの決断は正しいものだったと強調している。「決断を下したのは法律の専門家で、朝の10時に始まった話し合いは深夜に及んだ」と話す事務総長は、違反が証明されない限りは孫楊は無実だと続けている。

「彼らは証言に耳を傾けた上で決断を下す。CASに持ち込まれたわけだし、次のステップがどうなるかを見守ろうじゃないか。誰かを勝手に断罪するのは非常に難しいことだ」 (c)AFP/Alastair HIMMER