「汚らしい?」「ノン!」 吐き出す行為はワインテイスティングの要
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【7月27日 AFP】口の中のものを吐き出すことは、礼儀作法を重んじる社会では眉をひそめられる行為だ。だが、ソムリエ社会は別だ。
仏パリ在住のソムリエであるピエールジュール・ペイラ(Pierre-Jules Peyrat)氏は、「この世界ではワインを吐き出すことは、一目置かれる行為だ」と話す。
ペイラ氏はパリで行われたワインのテイスティングイベントで、うっとりとした顔で見守る大勢を前に、4杯目のグラスを手にする。まず、グラスに鼻を突っ込み、冷えたロゼワインを口に含んで数秒間、かむように転がす。「アヒル口」をして空気を少し吸いワインの特徴を確かめ、最後に口の中のワインをためらうことなく専用の容器に吐き出した。
ブドウ生産者やエノロジスト(ワイン醸造家)、ソムリエ、ワイン販売者といった専門家にとってワインのテイスティングとは、色調や空気に触れた時の変化、香り(アロマ)を確かめ、最後に口に含んだ味わいや「構造」を評価することを意味する。
ワインを吐き出す行為は、味わうことの本質になっている。
「ワインを飲み込めばよりアロマを感じられると思う人もいるが、それは間違っている」。2003年にワインの専門学校「エコール・ドゥ・バン・ド・フランス(Ecole du Vin de France)」を設立したオリビエ・ティエノ(Olivier Thienot)氏はそう指摘する。
エノロジストのクリストフ・マルシェ(Christophe Marchais)氏は「ワインを吐き出した後に香りを感じることが多い」が、ワインをあまり知らない人にとっては「少々奇妙な」行為に見えるかもしれないと語った。
ワインを吐き出す行為は高級ワインを無駄にするものだと批判する人や、無作法で滑稽に見られたり、服を汚したりするのが心配だと言う人もいる。
だが、鼻から吸い込んだ空気とワインが混ざり合った時に口から吐き出すと「口の中に芳醇(ほうじゅん)な香りが広がる」とペイラ氏は指摘する。「飲み込むよりも、ずっと大きな喜びを得られる」
ティエノ氏は、フランスにいる約7000人のエノロジストにとって「ワインを吐き出すことは普通の行為」であり、テイスティングのプロは1日に100種類ものワインをテイスティングすることもあると指摘している。(c)AFP/Isabel MALSANG