■「大義のために死ぬこともいとわない子どもたち」

 こうした子どもたちは何年もの間、ジハードの話を家族から聞かされて育ち、時には暴力的な主張をすることもあるとカウンセラーは話す。

 こうした子どもたちから信頼を得ることは容易ではない。だが施設の職員たちは、自分たちの方法が、子どもたちに染み付いた過激な思想の中和に役立つのではないかと考えている。

 オーストラリア国立大学(ANU)で過激思想に染まった家族について研究しているハウラ・ヌーア(Haula Noor)氏は、更生プログラムを行う上で、「こうした子どもたちに対しては、被害者であると同時に、加害者にもなり得るという見方をするべきだ」と話す。

 昨年5月、ミラさんをぴったり挟んでバイクに乗っていた両親が、スラバヤ(Surabaya)の警察本部の前で自爆攻撃を行った。

 その後も女性や子どもによる自爆攻撃が相次いだことから、警戒心を持たれることが少ない女性や子どもが関わった自爆攻撃は今後も起きる可能性があると、国際社会は懸念を抱いている。

 インドネシアではミラさんのケース以外にも、より広範囲な更生プログラムが実施され、これまでに民兵組織に関わった子ども約200人が履修した。

「子どもたちには優しく接しなければなりません。(大義のためには)死ぬこともいとわないので、力を行使しても何の意味もないので」。無差別攻撃の撲滅を目指す団体の代表を務めるスハルディ・アリウス(Suhardi Alius)氏はAFPにそう話す。

 だが親族は、こうした子どもたちを引き取るのに難色を示すことが多い。そのことがきっかけで、彼らが将来、過激主義者に戻ってしまう恐れもある。

 ヌーア氏は、「社会的偏見がある限り、子どもたちが自分の親と同じイデオロギーに再び傾倒する可能性は極めて高い」と語った。(c)AFP/Kiki Siregar