【7月20日 AFP】バイクに乗っていた両親が家族を巻き込んで自爆攻撃を行ったとき、一緒にいたミラさん(9、仮名)は放り出されて一人だけ生き残った。世界最大のイスラム教徒人口を有するインドネシアでは、子どもを道連れにした自爆攻撃が相次いでおり、国民に動揺を与えている。

 過激な思想を植え付けられて育ち、孤児になったミラさんの将来を危ぶむ声もあるが、同国では無差別攻撃の容疑者の子どもたちを更生させるプログラムに改めて関心が高まり、ミラさんにも更生のチャンスが与えられるかもしれない。

 ミラさんが入所している首都ジャカルタ郊外にある国営の更生施設では、自爆攻撃の実行犯の子どもや、攻撃に直接関わった子どもから成る少人数の集団に対して、特殊なプログラムの下で心のケアや社会的なサポートを提供している。

 だが、「子どもたちは、天国へ行くためには武力によるジハード(聖戦)を実行しなければならないと教えられています。イスラム教徒でない者は殺さなければならないと。そうした考えを変えるのはとても大変です」。同施設の責任者であるネネン・ヘリャニ(Neneng Heryani)氏はAFPの取材にそう語った。

 施設では、子どもたちが社会性を取り戻せるよう、ソーシャルワーカーや心理学者によるカウンセリングが行われ、授業やモスク(イスラム礼拝所)訪問、遊びなど、普通の日常生活を重視した活動を実施している。更生プロジェクトの中心となるのは子どもたちにさまざまな知識を授けることで、インドネシアの国民的英雄や信頼構築の必要性、さらには多数の島々で約2億6000万人が暮らすこの国で皆が民族的・宗教的少数派を尊重しながら団結するべきだとする国是「パンチャシラ(Pancasila)」などをテーマにした授業が行われている。

 インドネシアでは2018年、自爆攻撃の実行犯が自身の子どもを利用した事件が初めて発生し、その後も同様のケースが相次いだ。