【7月10日 AFP】米宇宙船アポロ11号(Apollo 11)の月への旅は、最初の4日間は計画通りに進んだものの、月面着陸まで残りわずか20分の時点で問題が次々と発生し、状況は一気に緊迫した。

 1969年7月20日、世界がアポロ11号の旅の進展を見守る中で、米ヒューストン(Houston)の地上管制センターとの無線連絡が短時間、途絶えた。そして、ニール・アームストロング(Neil Armstrong)船長が搭乗し、エドウィン・オルドリン(Edwin Aldrin)宇宙飛行士の操縦で下降中だった月着陸船「イーグル(Eagle)」内で警報ベルが鳴り響いた。

 2時間前にイーグルを切り離したアポロ11号宇宙船の主要部分である司令船「コロンビア(Columbia)」には、3人目の宇宙飛行士、マイケル・コリンズ(Michael Collins)氏が残り、月周回軌道上にとどまっていた。

 アームストロング船長は、管制センターに「プログラム警報『1202』について教えてくれ」と無線連絡した。すると管制センターからは着陸を続行するよう指示が出された。管制側は、イーグルの搭載コンピューターがオーバーフローを起こしているものの、システムはすべて正常に機能していることを認識していたのだ。

 イーグルの下方に見える月のクレーターが、高速で流れていくように見えた。速過ぎる、とアームストロング船長は気付いた。この速度では着陸予定地を何キロも通り過ぎてしまう。

 アームストロング船長は手動制御に切り替え、船窓から新たな着陸地を探した。だが完璧な場所を見つけるのは困難で、着陸スペースが狭くなるのは避けられそうになかった。

「岩だらけのエリアだ」とオルドリン飛行士に告げる。

 オルドリン飛行士は速度と高度の数値をコンピューターから読み取り、アームストロング船長に伝え続ける。

 この間、燃料は急速に残り少なくなっていった。管制センターは、燃料が帰還分のみとなることを知らせる「ビンゴコール」が鳴るまでの残りの秒数を伝え続けた。ビンゴコールが鳴ってから20秒以内にイーグルは着陸しなければならない。それができなければミッションは中止となる。

 ビンゴコールまで、残り30秒だった。

 アームストロング船長は静かに集中しながら、自らの全経験を呼び起こした。

 イーグルが月面に停止する。「接地ランプ、点灯」と、オルドリン飛行士。着陸船の脚部にあるセンサーの一つが月面に接触したことを意味していた。エンジンが切られた。

「ヒューストン、ここは静かの海基地(Tranquility Base)。イーグルは着陸した」と、アームストロング船長は知らせた。