【8月4日 AFP】インド・マハラシュトラ(Maharashtra)州の州都ムンバイの中心にあるアジアで最も有名なダラビ(Dharavi)のスラムが、数十億ドル規模の再開発計画に揺れている──。このスラムはダニー・ボイル(Danny Boyle)監督の2008年の映画『スラムドッグ$ミリオネア(Slumdog Millionaire)』の舞台となったことでも知られ、非公式経済が活発な地域でもある。

 インド当局は、活気あるダラビのスラムを取り壊し、シンガポールのような超高層ビルとショッピングセンターが立ち並ぶ高級居住地にする計画を進めている。

 推進派は、再開発により数十万人の生活が向上すると主張しているが、一方の反対派は、政府が不動産業者に迎合しているとして、計画がダラビの社会構造を破壊させると非難している。

 液体せっけんを製造するアシュラフ・シェイク(Ashraf Sheikh)さんは「ダラビはムンバイの心臓だ…政府はそれを欲しがっている」と訴える。シェイクさんは最近、再開発に反対し8日間のハンガーストライキを実施した。

 ダラビはアジア有数の貧困地区で、推定70万から100万人が約2.1平方キロの土地にひしめき合って暮らしている。公衆のトイレを使うために数百人が並ぶこともある。

 だがここは、欧米諸国の人々が思い浮かべるスラムとは違う。ダラビは経済活動が盛んで、年間数十億ドル(数千億円)超の規模で取引が行われている。主要産業は、陶器や革製品、繊維製品などの製造業。約5000社が推定約1万5000の工場を運営しているといわれている。大量に出るごみもここで分別され、リサイクルへと回される。

 ある陶器職人は「私たちは100年以上ここで生活し働いてきた…ここに高層ビルを造るのなら私たちを撃ち殺してからだ」と語った。