■狩猟やホッキョクグマにも影響

 大気が暖まるのに伴い、この現象が加速され、地域住民の生活様式だけでなく、生態系をも変えることが予想される。地元の人々は氷上での狩猟に依存しているが、今後、狩りをできる期間はさらに短くなる見込みだ。

 米地質調査所(USGS)によると、北極圏に生息するホッキョクグマの個体数は海氷域の縮小が原因で、過去10年で約40%減少したという。

 北極圏に生息し、一角獣の角のような長い牙を持つクジラ類のイッカクも、主な天敵のシャチから身を守る役割を果たしている氷の減少に直面している。

■1日で37億トンの氷を消失

 世界の海水面上昇に直接的な影響を及ぼすのは、海氷の融解以外に氷床と氷河の融解がある。

 DMIによると、海抜3000メートルに位置するグリーンランドの「サミット観測所(Summit Station)」では4月30日、同観測所の観測史上最高気温となる氷点下1.2度を記録した。さらにグリーンランドでは17日、37億トンの氷が1日で消失したという。

 ベルギー・リエージュ大学(University of Liege)の気候学者、ザビエル・フェットバイス(Xavier Fettweis)氏はツイッター(Twitter)で「6月上旬以降、370億トンの氷が融解した」と指摘した。「2019年6月に氷床減少量の記録が更新される可能性はますます高くなった」という。

 デンマークの気象学者らは、氷の融解時期が通常よりほぼ1か月早い5月初めに始まったと発表している。

 氷の融解が5月上旬よりも前に始まったのは、データの記録が開始された1980年以降で2016年の1回だけだ。

 グリーンランドの氷の融解は、年間約0.7ミリの海面上昇の原因となっている。融解が現在の水準で続くとこの値はさらに増加する可能性がある。

 また、グリーンランドの氷河の融解による海面上昇は、1972年以降で13.7ミリに達している。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT