【6月20日 AFP】北極圏のデンマーク領グリーンランド(Greenland)では既に観測史上最高気温が記録されているが、2019年は北極にとって再び「ひどい年」となる可能性があると、科学者らは指摘している。グリーンランドの巨大な氷床の融解が進行すると、いつの日か世界の沿岸地域が水没する恐れがあるという。

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 デンマーク気象研究所(DMI)の気候学者、ルース・モットラム(Ruth Mottram)氏は「2012年に記録された北極の海氷面積の史上最小値(中略)とグリーンランドの氷床融解量の史上最大値の両方が、更新される可能性がある」と警告した。「今年は気象状態に非常に左右されている」

 DMIの科学者ステファン・オールセン(Steffen Olsen)氏は13日、グリーンランド北西部で通常より早く氷が解けて、犬が明るい青空の下、雪のない山々を背に水の上を歩いているように見える印象的な様子を撮影した。この写真はネットで拡散した。

 オールセン氏は係留型の海洋気象ブイと気象観測所の調査中で、写真は自身が乗るそりを引く犬たちがフィヨルドの海氷が解け、数センチ水がたまっている中を進む様子を捉えていた。

 モットラム氏は、AFPの取材に「この写真は印象的だ。(中略)なぜならこれは、北極がいかに変化しているかを実際に視覚化しているからだ」と語った。

 モットラム氏によると、オールセン氏の調査旅行に同行した地元の人は「海氷がこれほど早く解け始めるとは予想していなかった。通常は氷が非常に厚いのでこのルートを通るが、海氷の上にたまった水がだんだんと深くなり前に進めなくなったため、引き返さざるを得なかった」と話していたという。

 この写真が撮影された日の前日12日に、カーナーク(Qaanaaq)にある最も近い気象観測所が気温17.3度を記録した。これは2012年6月30日に観測された史上最高気温をわずか0.3度下回っていただけだった。

「冬に降雪が少なかった上、最近は暖気と晴天、日照(がある)。これらはすべて、氷がいつもより早く解けるための前提条件といえる」と、モットラム氏は説明した。