■ブリストルをストリートアートのキャンバスに

 世界的に有名な現代アーティストの一人となったバンクシーだが、彼について知られていることは驚くほど少ない。数人の友人しかその素性を知らないとも言われている。自身についてバンクシーは「私が素性を隠すまで、誰も私のことなど気にも留めなかった」と皮肉たっぷりのコメントをしている。

 バンクシーはブリストル出身で1974年生まれとされている。

 ブリストルストリートアートのゴッドファーザーとも称されるジョン・ネーション(John Nation)さんによると、バンクシーは以前、法に触れずに「作品制作」を行う方法について教える、グラフィティアーティスト向けの教育プロジェクトに参加していたことがあるという。

 ネーション氏は、「まだ若かった頃のバンクシーは、センターを訪れてみんなが絵を描くのを見ていた」「ヒップホップカルチャー、グラフィティにかなりはまっていたよ」と、ニュースサイトのハフィントンポスト(Huffington Post)の取材で語っている。

 バンクシーはその後、90年代初期に結成されたストリートアーティスト集団「DryBreadZ CrewDBZ」に加わったとされる。また2001年には、ブリストルのアマチュアサッカークラブ「イーストン・カウボーイズ(Easton Cowboys)」のメキシコ遠征にゴールキーパーとして参加し、滞在中に作品数点を残したとも言われている。

 そして、消費社会への批判や欧州の難民問題など政治的主張を帯びたバンクシー作品が世界各地で見られるようになると、その「悪評」はさらに高まっていった。作品は、仏カレー(Calais)やパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)でも制作された。

 もちろんブリストルでも定期的に新作を「発表」している。バンクシーは過去20年間、エイボン川(Avon River)が流れる人口46万人のこの町を、世界有数のストリートアートの「キャンバス」にするための土台づくりをしてきた。それが実を結び、今では約150人のストリートアーティストたちがブリストルを拠点に活動している。