【6月23日 AFP】英イングランド南西のブリストル(Bristol)にある何の変哲もない白いレンガの建物の壁に、オランダ黄金時代の巨匠ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)の「真珠の耳飾りの少女」をモチーフにしたグラフィティが登場したのは、今から5年前だ。

 この無表情に視線を送る少女の絵は、英国の覆面ストリートアーティスト、バンクシー(Banksy)が手掛けたもので、ステンシルを使って制作された。グラフィティのある薄暗い中庭は、今や同国で最も写真撮影が行われる場所の一つとなったが、ブリストル中に描かれた彼の作品の周囲は、どこも同じような状況となっているという。

 バンクシーによる「真珠の耳飾りの少女」のパロディー作品は、「The Girl with a Pierced Eardrum(鼓膜の破れた少女)」と呼ばれている。フェルメールの作品には耳飾りが描かれているが、パロディー版では、これと同じ位置に六角形の警報器がある。この警報器は建物にもともと設置されていたもので、少女の耳の位置に警報器がくるようにバンクシーが絵の位置を調整したのだ。

 彼らしい大胆不敵なエレメントが組み込まれたこの絵は、バンクシー作品として最も広く知られるものの一つとなり、数多くのファンが連日ここを訪れている。その多くはSNSに投稿された情報を頼りに集まってくる観光客だ。

「The Girl with a Pierced Eardrum」から歩いて15分ほどのところにも別の作品がある。「Well Hung Lover」として知られるグラフィティだ。建物の外壁に描かれた作品には、窓からぶら下がる裸の男性と、部屋の中から外を見る下着姿の女性とスーツ姿の男性が描かれている。この建物には以前、性感染症の専門クリニックが入っていた。2006年の作品だという。

 バンクシーが手がけた作品で最も有名なのは、「Love is in the Bin(愛はごみ箱の中に)」だろう。この作品はもともと「Girl with Balloon(風船と少女)」と呼ばれていた。しかし、昨年のオークションで、本人の作品としてこれまでの最高落札額と並ぶ104万2000ポンド(約1億4200万円)で落札された直後、額縁に仕込まれていたシュレッダーでその大部分が細断される「事件」が起きたのだ。

 結局、落札者はそのままの状態で作品を購入しているが、一部の専門家は、細断されたことでかえって作品の価値が上がったとの考えを示している。