【6月10日 AFP】前回にサッカー女子ドイツ代表FWのアレクサンドラ・ポップ(Alexandra Popp)がW杯(FIFA Women's World Cup)に出場した時は、動物園の飼育員になるための勉強を保留にしなければならなかった――。その4年後となる今回のフランス大会(FIFA Women's World Cup 2019)では、飼育員としての正式な資格を手にチームを優勝に導くことを目指している。

 現在28歳のポップは、ドイツがカナダ大会(FIFA Women's World Cup 2015)でベスト4入りを果たした2015年、飼育員の資格を取るための3年間のコースを6か月遅れで修了。今年はドイツ代表の新しい主将として前回の成績を上回り、母国に通算3度目のタイトルをもたらしたいと考えている。

 W杯優勝には「大変な努力」が必要になると覚悟しているポップだが、ハードワークという点に関して言えば動物園で多くの経験を積んだ。ポップは地道な勉強とサッカー選手としてのキャリアを両立させていた時期を思い出しながら、「(動物園では)かなりの肉体労働で、体力の回復が難しかったです」と振り返った。

 2015年に研修を終えた独エッセホーフ(Essehof)の小さな動物園で報道陣の取材に応じたポップは、動物の世界とサッカーには共通点があると話した。

「動物の世界はサッカーチームに通じるものがあります」「動物の間にも団結というのものが根底にあります」「自然界では誰もが他者のために自分を犠牲にしなければならず、たくさんコミュニケーションを取る。それが集団としての成功の秘訣(ひけつ)です」「動物とコミュニケーションを取る時は、ピッチ上とまったく同じようにボディーランゲージが重要」 

 チームの年長選手、そして中心ストライカーとして母国代表をけん引するポップにとって、ボディーランゲージとコミュニケーションは最も重要な要素だと言い、「ピッチ上では、他の選手がミスを修正しないと、大きな声を出す時もあります」と明かした。

 パワフルなプレーで、ゴール前で相手の脅威になるポップは、ドイツ代表として通算96試合に出場して計46得点を記録(今W杯開幕前までで)。また所属チームであるドイツ女子1部リーグ、VfLボルフスブルク(VfL Wolfsburg)では通算2度の欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Women's Champions League)制覇を成し遂げた。

 しかし、今年はW杯のわずか数か月前に主将に指名され、その輝かしいキャリアの中でも最も大きな年になるかもしれない。

 マルチナ・ボス・テクレンバーグ(Martina Voss-Tecklenburg)新監督が率いるドイツ代表チームでは、フランス女子1部リーグのオリンピック・リヨン(Olympique Lyon)でプレーするスター選手ジェニファー・マロジャン(Dzsenifer Marozsan)がシーズン序盤に主将の座から自ら降り、その後任としてポップに白羽の矢が立てられた。

「私はすでにベテランの域に入っているので、ピッチ上での変化はそれほどありませんでした」「父親もサッカー選手でリーダー的存在だったから、私にも生まれつき素質があったのだと思います」

 そう話す一方、ポップは新しい役割を担う中で課題もあると認め、「組織という点でピッチの外では少し変化があります。英語を勉強しなくてはいけないというのがその一つです」と明かした。

「今はW杯でドイツ代表を引っ張ることが楽しみです」

 ポップは主将としてのプレッシャーを自覚しているが、W杯を前に訪れたこの動物園の中では頭の中を確実にクリアにできる。「サッカーをする上で、動物たちは素晴らしい気分転換になります。サルのケージの前に2時間も座っていたら、気持ちが落ち着きます」 (c)AFP/Kit HOLDEN