【5月31日 AFP】世界各地の河川が、環境安全基準値を最大で300倍上回る抗生物質で汚染されているとの研究結果が、フィンランド・ヘルシンキで今週開催された欧州セタック(SETAC Europe)の年次総会で発表された。

 英ヨーク大学(University of York)などの研究チームが、世界6大陸72か国の河川から711のサンプルを収集し調べたところ、その3分の2に1種類以上の汎用(はんよう)抗生物質が含まれていたことが分かった。

 抗生物質は人間や家畜の細菌感染を抑えるために使用される薬剤だが、今回は14種の汎用抗生物質を調べた。この結果、薬剤耐性業界連合会(AMR Industry Alliance)が定める抗生物質濃度の安全基準を、多数の地域で上回っていた。同連合会はバイオテクノロジー関連企業と製薬会社100社以上で構成される業界団体。

 腸管感染症や尿路感染症の治療薬である抗生物質シプロフロキサシンについては、調査対象地のうち51か所で基準値を上回っていた。また、広く使用されているもう一つの抗生物質メトロニダゾールについては、バングラデシュのある地域の濃度が基準濃度を300倍上回っていたという。

 英ヨーク環境持続可能性研究所(York Environmental Sustainability Institute)の科学者、アリステア・ボクソール(Alistair Boxall)氏は「これは非常に驚くべき、憂慮すべき結果で、抗生物質化合物による汚染が世界中の水系に広まっていることを実証している」と述べた。

 抗生物質の存在の広がりは野生生物に影響を与えているが、薬剤耐性問題の一因にもなっている可能性が高い。

 世界保健機関(WHO)は世界中で抗生物質の有効性が失われつつあると警告し、業界や政府に対し新世代の抗生物質を早急に開発するよう呼び掛けている。

 1920年代に発見された抗生物質は、肺炎、結核、髄膜炎などの多くの致死性細菌から何万人もの命を救ってきた。だが、抗生物質の過剰使用や誤用は、薬剤耐性菌の主な原因となっていると考えられている。

 だが、今回の研究では、自然環境に存在する抗生物質が増えていることも、薬剤耐性菌の主な要因の一つとなっている可能性が示唆された。