【5月23日 AFP】長きにわたる法廷闘争や会場の移転といった危機を乗り越え、26日に開幕する今年の全仏オープンテニス(French Open 2019)では装いを新たに生まれ変わった会場がお披露目される。推定総額3億5000万ユーロ(約430億円)の費用が投入された改修拡張工事により、厳しい環境保護論者が涎(よだれ)を垂らしてしまうような緑あふれる会場となった。

 全仏オープンのセンターコートであるコート・フィリップ・シャトリエ(Court Philippe-Chatrier)は、開場から90年が経過した昨年の大会終了後に取り壊された。それから12か月がたち、改修工事はほぼ完了。2020年大会までには開閉式の屋根を持つようになる見通しとなっている。

 他の四大大会(グランドスラム)がすでに屋根付きのコートを使用しているなか、クレーで行われる唯一のグランドスラムであるローラン・ギャロス(Roland Garros、全仏オープン)は後れを取っているが、完成すればナイトセッションの試合も開催できるようになる。

 1万5000人を収容するフィリップ・シャトリエは拡張され、老朽化していたプラスチック製の客席は新たに木製のものに取り替えられた。伝統あるコートの中で今までと変わらないのは、その赤土だけだ。

 また今大会からは、第2次世界大戦(World War II)中の抵抗運動で英雄的な存在にもなった元全仏女王のシモーヌ・マチュー(Simonne Mathieu)さんの名を冠した新コート、コート・シモーヌ・マチュー(Court Simonne-Mathieu)もお披露目される。

 収容人数5000人の同コートは、隣接するオートゥイユ温室庭園(Jardin des Serres d'Auteuil)の敷地内に建設されることで議論を呼んだ。19世紀からの歴史がある植物園に悪影響を与えるとして反対する環境保護団体や地元住民との間で法廷闘争となり、フランステニス連盟(FFT)がようやく決着をつけたのは昨年5月のことだった。

 一時はいらだったローラン・ギャロス(Roland Garros、全仏オープン)の主催者がパリでの開催続行を諦め、新たに会場を郊外へ移転する案をちらつかせたこともあったが、最終的にはアフリカや東南アジア、オーストラリアなどの植物が入った温室に四方を囲まれたコートが誕生した。

 また1万人収容のコート・スザンヌ・ランラン(Court Suzanne Lenglen)は維持される一方で、コート1は今大会終了後に解体される。その他では、スザンヌ・ランランの西側が劇的に変わり、2018年から新しくなったコート14の補助的な役割を果たすコートが新たに6面造られた。(c)AFP