■標準化との闘い

 メルシエさんは「われわれは、農家、大企業、チーズ職人など皆が共存できるよう、質・量においてカマンベールの価値を回復させようとしている」と説明する。

 だが、改正案は、乳製品製造・販売大手「ラクタリス(Lactalis)」のような大企業によって骨抜きにされてしまうと懸念する人もいる。ラクタリスは日常消費用のカマンベールを「ノルマンディー産」として大々的に販売していたため、類似性が消費者を混乱させるとして、当局から中止を指導されたことがある。

 一流シェフらも今回の変更を激しく非難し、濃厚でクリーミーなカマンベールが、白い粉を吹いたただの円盤になってしまうと警戒感を示している。

 今回の改正案の撤回を求める動きの先頭に立つベロニク・リシェルルージュ(Veronique Richez-Lerouge)さんは、「これは標準化に抵抗する闘争だ。これによってカマンベールのラベルを与えられる工業生産者だけを利するものだ」と語った。

 さらにリシェルルージュさんは「カマンベールだけではない」「シャンパンやスペインのイディアサバルチーズにも関わることだ。AOPは、他でやっているのなら自分たちだってやってもいいだろう、と言っているのと同然だ」と続けた。