【5月16日 AFP】元陸上男子短距離のウサイン・ボルト(Usain Bolt)氏(32)が15日、フランス・パリで電動キックスケーター事業に参入すると発表した。プロサッカー選手になるという夢はかなわなかったボルト氏だが、思いもよらぬ分野で新たなエネルギーのやり場を見つけている。

 五輪で計8個の金メダルを獲得しているボルト氏は発表会で、「近年は世界中を旅し、たくさんの交通渋滞を目にする中で、われわれのキックスケーターにニーズがあることが分かった」と話した。「パリには何度も足を運んでいて、ここの交通状況は分かっている。電動キックスケーターで人々が時間通りに動けるようになると思う」

 ボルト氏が共同出資者となったブランドの名前は「ボルト・モビリティー(Bolt Mobility)」。ボルト氏の名前があしらわれた約450台の電動キックスケーターは、数日中にパリ市内に配備される予定となっている。

 電動キックスケーターは人気が高まっているが、パリでは交通渋滞に悩まされる通勤者の助けになっている一方で、使用者の迷惑行為やその危険性が問題になるなど、ここ1年は議論の的となっている。

 パリ当局は先日、歩道に「あふれかえっている」電動キックスケーターを撤去するよう事業者に指示し、実行されなかった場合は一時的な処分を科すと警告するなど、ボルト氏の参入は微妙なタイミングとなっている。

 13日には、電動キックスケーターのサービスを展開する企業10社が市長室で「善行規定」にサイン。ボルト氏も15日中に署名する予定となっている。

 またボルト氏は、事業参入が遅すぎるとの指摘を否定。自身のブランドはパリ当局と協働しているとし、「遅れているということではなく、正しいことをしているという点が重要だ。正しいことをするために時間を使ったし、当局とも話し合った。すべてが完璧な状態でローンチできるよう万全の準備をした」と続けた。

 陸上競技を引退後にプロサッカー選手を目指したボルト氏は、2018年に豪Aリーグのクラブでトライアルを受けたが契約には至らなかった。(c)AFP