■採算は

 だが垂直農法を推進する上で、財政面での実行性を見いだすことができるようになるまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

「垂直農法を大きな規模で展開する企業は利益を生み出すことに苦労している。事業を立ち上げる際に必要となる資金がかさみやすいのだ」とコンサルタント会社アグリテクチャー(Agritecture)のヘンリー・ゴードンスミス(Henry Gordon-Smith)氏は指摘する。

 大規模農業経営では利益を出すのに通常、7年から8年を要するとされるが、より小規模な農場ではその半分で済むと言われている。

 垂直農法の懐疑派はまた、この農法では二酸化炭素の排出量が大きくなることを指摘する──大量の照明と換気が不可欠なためだ。しかしその一方で、使用する水を削減でき、人口集中地域に近い立地や農薬を必要としないなど、そうしたマイナスの部分を相殺してプラスに転じさせるだけの利点がこの農法にはあるとの意見もある。

 ただ最も大きな課題は、限定的な生産物種にあると思われる。少なくとも栄養価の点では問題だ。

 これについて、米プリンストン大学(Princeton University)の植物研究者ポール・ゴティエ(Paul Gauthier)氏は、「サラダだけでは世界の人々の腹を満たすことができない」と指摘しながら、垂直農園はタンパク質をより多く含む作物に着手する必要があると主張している。(c)AFP/Juliette MICHEL