【3月31日 AFP】香港政府による逃亡犯罪人引き渡し条例の改正案が、容疑者の身柄を中国本土に送還できるとした内容であることから、香港の経済界や司法関係者の間に、香港の国際金融都市としての魅力を損ない、不透明な中国での裁判に人々を巻き込むものとの不安が高まっている。

 香港政府が提出した改正案は、「個別の事件に応じて」、容疑者の身柄を台湾、マカオ、中国本土に移送できるとする内容。同案は4月3日に立法会(議会)で審議される。

「逃亡犯条例」の改正案が急きょ、提出されることになったのは、台湾で発生した殺人事件がきっかけだった。香港在住の男が休暇で訪れた台湾で、妊娠していた交際相手の女性を絞殺して香港に逃亡。しかし、香港と台湾の間には身柄引き渡し協定がなく、被害者への同情と、男の身柄を台湾へ移送できないことへの不満が巻き起こっていた。

 だが、香港政府の突然の決定には、台湾だけでなく中国本土も対象に含まれていたことから、親中派の香港当局が台湾での殺人事件を利用したものだとして激しい反発を招いている。

 改正案に反対する人たちは、身柄引き渡し協定によって、香港のビジネスマンや反体制派が、著しく政治色の強い中国で裁判にかけられるリスクを負うことになり、これまで司法の透明性と独立性を誇り、国際ビジネス拠点として繁栄する香港の地位を掘り崩すものと恐れている。(c)AFP/Elaine Yu and Yan Zhao