【3月22日 AFP】世界の石油・ガス最大手5社が、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」の掲げる目標と「著しく相反する」広報活動やロビー活動に巨額資金を投じていたとする報告が22日、発表された。支出額は、協定の採択された2015年以降で総額10億ドル(約1100億円)に上るという。

 透明性を監視する団体「インフルエンスマップ(InfluenceMap)」によると、米エクソンモービル(ExxonMobil)、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)、米シェブロン(Chevron)、英BP、仏トタル(Total)の5社は、表向きはパリ協定とその気温目標を支持すると約束しつつ、実際には「化石燃料事業の運営と拡大」に年2億ドル(約220億円)をつぎ込んできたとされる。

 シェルとシェブロンの2社は、インフルエンスマップの調査結果を認めないと表明している。

「化石燃料セクターは、気候変動関連の課題や行動計画に影響を及ぼすため、極めて戦略的な計画にてこ入れしてきた」と、インフルエンスマップのディラン・タナー(Dylan Tanner)事務局長はAFPに説明した。「これは、彼ら(化石燃料セクター)のロビー団体や業界団体による継続的な活動だ。規制の細部をあげつらい、それらを現状に至るまで延々と操作し、石油メジャー(国際石油資本)と気候問題をめぐるメディアの考え方をコントロールしてきた」

 このところ石油メジャーは、環境に配慮した法律の整備が進んだ場合にビジネスモデルにどのような影響が出るかを明確にするよう、株主らの高まる圧力にさらされている。

 地球温暖化の原因となる温室効果ガスの濃度は2018年に史上最高を記録したが、同年に5社が上げた利益は総額550億ドル(約6兆900億円)に上った。

 インフルエンスマップは、2015年以降に公表された収支報告書やロビイストの登録数、各種情報を調べた結果、5社の表明した気候変動に関する取り組みと、実際に取った対策との間に大きな隔たりがあることが分かったと主張している。

 それによると、5社すべてがロビー活動を展開、または議員や当局者とじかに接触して口説くなどし、気候変動問題のブランド戦略に数百万ドルを投入。政策を議論する場で、業界団体に石油・ガス業界の利益を代弁させていたという。

 調査では、前向きなメッセージと気候変動に否定的な政治ロビー活動を組み合わせた、慎重に考案された運動が展開される傾向が明らかになったという。

 5社が2019年に計上した資本投資額は1100億ドル(約12兆1600億円)を超えているが、インフルエンスマップによれば、このうち低炭素構想への割り当てはわずか36億ドル(約4000億円)にとどまっている。(c)AFP/Patrick GALEY