【3月15日 AFP】世界一寒い首都、モンゴルのウランバートルでは、多くの人々が氷点下40度にまで気温が下がる厳しい寒さをしのぐために石炭やプラスチックを燃やしている。だが、こうして得られる暖かさには大きな代償が伴う──危険な汚染だ。ウランバートルの大気は子どもが呼吸するには毒性が高すぎるレベルに達しており、親たちは子どもを地方に避難させる以外に選択の余地がほとんどない状況に陥っている。

 この集団脱出は、アジアの大半の都市地域にとって未来への厳しい警告となっている。褐色の空をバックに汚染防止マスクをした市民たちの光景は人類終末の世界ではなく日常となりつつある。

 ウランバートルは、インドのニューデリー、バングラデシュのダッカ、アフガニスタンのカブール、中国の北京などとともに世界で最も大気汚染が深刻な都市の一つとされる。発育不良や慢性疾患、場合によっては死亡などの悲惨な結果が、特に子どもに対してもたらされると専門家らが警告しているにもかかわらず、世界保健機関(WHO)が勧告する大気の質に関する汚染の基準値を常態的に上回っている。

 エルデネ・バト・ナランチメグ(Erdene-Bat Naranchimeg)さんは、娘のアミナちゃんが生まれてからほぼずっと病気と闘ってきたのをなすすべもなく見守ってきた。アミナちゃんはスモッグで息が詰まりそうなウランバートルの大気の影響で、免疫系に障害が生じている。

 ナランチメグさんは、AFPの取材に「私たちはこれまでずっと入退院を繰り返してきた」と語り、アミナちゃんは2歳の時に2回肺炎にかかり、一連の抗生物質治療を数回受けなければならなかったと付け加えた。

 冬季の気温がほぼ居住に適しないレベルにまで落ち込む都市の、特に地方の労働者らが生活の向上を求めて移住してきた地区では、これは特異なケースではない。

「ゲル」として知られる伝統的なテント型住居が何列も連なるこの地区では、石炭やその他手に入る可燃物なら何でも燃やして暖を取る。この燃焼で生じる濃い黒煙がもくもくと立ち上り、周辺の地域を覆うため、数メートル先も見えにくくなるほど視界が悪くなる。

 その影響か、どの病院も患者であふれており、幼い子どもたちは体が弱く、普通の風邪が命にかかわる病気に発展する恐れすらある。