■「戦略的企業であり貿易の道具」

 ボーイングは、13日に予定していた新大型旅客機「777X」のロールアウト(完成披露)式典を延期することを明らかにした。

 同社は声明で「調査は初期段階にあるが、現時点で入手可能な情報に基づくと、運航各社に新たな指針を出すような根拠は見当たらない」と述べた。一方、FAAはデータを見直し、「安全性に影響を及ぼす問題を特定した場合には、直ちに適切な措置を取る」としている。

 エチオピア航空の事故を受け、11日の米株式市場ではボーイングの株価が一時、約12%安まで下落した。

 関係筋がAFPに語ったところによると、737MAX8型機24機を保有するアメリカン航空(American Airlines)は、予定通り運航を続ける意向だ。また、カナダ当局者によると、同国内で現在運航されている3機に停止を命じる予定はないという。

 米当局は6年前にボーイング787型機のバッテリー問題で同機の運航停止を命じたが、当時運航されていたのは50機のみだった。一方、737MAX8型機は現在350機が運航されている。737MAX8型機はボーイングの主要な収入源として期待されており、運航停止となれば、大打撃となる。また、ボーイングは米国内で15万人以上を雇用しており、経済的影響はさらに大きくなると考えられる。

 今年1月までの737MAXの受注数は4661件で、ボーイングでは今年中に月間生産数を52機から57機に引き上げる計画をしている。

 737MAXについては、緊張が高まっている米中貿易協議でも取り上げられた。報道によると、米国側は急増している対中貿易赤字の解消手段として、中国側に737MAXの購入を増やすよう迫った。

 航空宇宙産業を専門とする分析会社エアインサイト(AirInsight)のミシェル・メルルゾー(Michel Merluzeau)氏は、「ボーイングは戦略的企業であり、貿易の道具だ」と指摘する。同氏は、この意味において、中国が737MAX8型機の運航中止を発表したのは、必ずしも安全上の懸念とは関連しないとの見解を述べた。(c)AFP/Luc OLINGA