【1月31日 MEE】イラク北部の町タルアファル(Tal Afar)。地元の商いを支える卸売店前の舗道に、トルコから輸入されたオリーブの実のケースが山積みになっている。

 2014年6月にイスラム教スンニ派(Sunni)過激派組織「イスラム国(IS)」の手に落ちるまで、イラクの農村地帯にあるこの町は、何十年もの間、オリーブを輸入したことはなかった。地元にオリーブ園がいくつもあり、そこからの収穫だけで町や周辺の村々の需要を十分満たせたからだ。

 だが、タルアファルを掌握したISが最初にやったことの一つが、オリーブ園などに火を放つことだった。こうして、地元の人たちが長年かけて育て上げたオリーブ産業は破壊された。

 卸売店の店主ナシド・フセイン(Nashd Hussein)さんは、店先に並んだトルコ産オリーブのケースを指しながら言う。「こんなものを仕入れるなんて、昔は一度もなかったよ。うちで卸すオリーブは全部地元産だったから、わざわざ外から買う必要がなかったんだ」

 そしてこう続ける。「だけど、ISがここで破壊したのはオリーブの木だけじゃない。やつらはすべての果樹、それに農業施設や農機も破壊したんだ」

 イラク北西部ニナワ(Nineveh)州の地方部にあるタルアファルは、住民の大部分をトルコ系のトルクメン人が占める。ISに支配されていたイラク第2の都市で州都のモスル(Mosul)の西63キロ、やはりISに占拠されていたシンジャル(Sinjar)の東52キロに位置し、シリアとの国境にも近い戦略上の要衝だ。

 ISの支配下にあった3年余りの間には、住民の多く、中でも、イラクで少数派のイスラム教シーア派(Shiite)の住民が避難した。その後、2017年8月になってようやく、タルアファルはイラク政府軍によって解放された。