■「メッシに会いたい」

 国連(UN)によると、今回の攻勢で避難民となっているのは最大4000家族。戦闘ではアフガニスタン軍やタリバンだけでなく、民間人にも多数の死者が出ており、目撃者たちはAFPの取材に「純然たる恐怖」だったと証言している。

 アフガン治安部隊は既にジャゴリ地区からタリバンを撃退したが、もはや一家の心が安まることはないとシャフィカさん。「タリバンが再び襲って来る可能性は高い。戻るという選択肢はない」

 ムルタザ君の知名度が上がってから、一家に注目が集まり、危険を感じることは増えていた。自宅に地元の有力者たちがやってきて「金持ちになったんだろう。メッシにもらった金を寄こせ。さもないと息子を連れていくぞ」と脅されたり、夜間に見知らぬ男たちがうろついて一家の様子をうかがってはどこかに電話したりしていたため、ムルタザ君には家の外で他の子たちと遊ばないよう注意していたという。

 実は、一家は2016年にもパキスタンに一時避難していた。「どこか安全な国」での難民認定を求めたが、所持金が尽き、泣く泣くジャゴリ地区の自宅に戻ったという。今は、父親がジャゴリ地区に残って畑仕事を続ける一方、ムルタザ君たちはカブールで窮屈な部屋を借り、食べ物や水、衛生用品にも事欠く不安定な避難民の生活を送っている。

 ムルタザ君にポリ袋ユニホームを作ってあげた兄ホマユン(Homayoun Ahmadi)君は、カブールでも弟のことが周囲に知られたら「悪いことが起きるんじゃないかと心配だ」と話した。

 ムルタザ君本人はというと、メッシ選手からプレゼントされたサッカーボールとユニホームが手元にないのが寂しいという。「(ボールとユニホームを)取り戻したい。そうすれば遊べるのに」

「メッシ選手に会いたいな」とムルタザ君は言った。「会ったら、『サラーム』(イスラム教徒のあいさつ)と言ってから『調子はどう?』って聞くんだ。そうしたらメッシ選手はありがとう、無事だよって答える。それから2人でピッチに行って、メッシ選手のプレーを見るんだ」 (c)AFP/Usman SHARIFI