■「自分には競技が必要」

 ハガー氏によれば、アスリートが競技復帰を目指したり新しいスポーツに挑戦したりするのは、こうしたことが理由の一端とされており、「強い達成欲求が、アスリートを深い穴に落としてしまうこともある」という見解を示した。

「多くのアスリートたちは、自分の競争心を満足させるための別の手段として、マネジメントや指導者、あるいは違う道を模索する」「しかしながら、一部のアスリートは競技場でしか満足感を得られないと考え、(成功の程度こそあれど)華々しく復帰を果たすか、別のスポーツに挑戦しようとする」

 例を挙げると、イングランドの元クリケット選手であるアンドリュー・フリントフ(Andrew Flintoff)氏や、同国プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)で活躍した元サッカー選手のリオ・ファーディナンド(Rio Ferdinand)氏は、いずれもボクサーに転身した経験がある。

 男子テニスで通算8度の四大大会(グランドスラム)制覇を成し遂げたイワン・レンドル(Ivan Lendl)氏は、テニス界から退いた後、ゴルファーに転身してプロの大会にも数回出場しており、2008年に英紙ガーディアン(Guardian)に対して、「テニスではもはや得られないことを、ゴルフは自分に与えてくれた。自分には競技が必要だ。これまでずっと競技のためにトレーニングをこなしてきて、そこから離れることはできなかった」と明かしている。

 一方、中には現役生活を続けながら、別の競技でサクセスストーリーを築く選手もいる。ラグビーニュージーランド代表のソニー・ビル・ウィリアムズ(Sonny Bill Williams)は、本業と並行してボクシングに挑戦し、ヘビー級タイトルマッチのタイトルを獲得。また、オーストラリア出身のエリーズ・ペリー(Ellyse Perry)は、クリケットとサッカーの両方でW杯に出場する多才ぶりを発揮している。