■落ち着こう、ビールでも飲んで

 关教授と研究チームは、温室効果ガス排出量が大幅に削減された場合から「現状維持」に至るまで、さまざまな未来の気候シナリオを描き、それらの下で発生する極端な気象現象が、最も重要な世界34か所のオオムギ栽培地域の収穫高に及ぼす影響を予測した。

「異常気象年」は、地球温暖化が始まる前の100年に1度の事象よりも厳しい熱波と干ばつの両方が、オオムギの栽培地域で生育期に発生する年として定義された。

 そして2010年から今世紀末までに、人類が地球温暖化の気温上昇幅を2度未満に抑えることに成功する場合には、このような極端気象現象が17回、炭素汚染が現在のペースで続く場合には139回、それぞれ発生することを研究チームは明らかにした。

 研究の次の段階では、「オオムギの供給ショック」が各地域のビールの生産量と価格にどう影響するかを評価した。

 気候変動によって混乱した世界では、コムギ、トウモロコシ、ダイズ、コメなどの主要穀物の収穫高と栄養価が減少すると予測されるため、オオムギをビール原料ではなく食物源の一つとして利用すべきだという圧力が高まる可能性が高い。关教授は、「気候変動は『ぜいたく』品の可用性、供給安定性、入手容易性などを損なう可能性がある」という。

 だが同時に「文化の枠を超えたビールを好む傾向」は根強く広く行き渡っているとも、关教授は指摘する。「世界中の何百万という人々にとって、ビールの可用性と価格に気候の影響が及べば、踏んだり蹴ったりの事態をもたらすに違いない」。ことわざにあるように「今は楽しくても、いつかはビールが底を突く」のだ。

 オオムギのトップ輸出国はオーストラリア、フランス、ロシア、ウクライナ、アルゼンチンで、その他多くの欧州諸国が上位20か国に名を連ねている。

 一方、オオムギ輸入国の上位は中国、サウジアラビア、イランで、その後に小差でオランダ、ベルギー、日本の醸造3大国が続いている。(c)AFP/Marlowe HOOD