■武器としての絵筆

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)の2016年の報告書によると、2011年3月から2015年12月までの間に推定1万7723人が拘束下で死亡している。

 アビルさんの助けがなければ、アルブカイさんの名も死亡者リストに加えられたかもしれない。フランス語教師であるアビルさんの月給は80ドル(約8800円)だ。アルブカイさんを自由にするために、自家用車を売り、支援を求め国外からかき集めた2万ドル(約220万円)を賄賂として使った。拘束から約10か月、再び自由を獲得した。

 そして2015年10月、夫妻と娘はレバノンにたどり着き、フランスに亡命を申請した。現在は静かなパリ南郊に暮らしている。

 シリア政権軍が反体制派の最後の拠点であるイドリブ(Idlib)県への圧力を高めるなか、アルブカイさんは「われわれは敗北し、革命は失敗に終わったのかもしれない」ということを認める覚悟をしている。

 だが自分が見たことを描いた絵を通じて炎は燃え続けると話し、「(作品制作は)降参しない方法、戦い続ける方法のひとつ」と続けた。(c)AFP/Clare BYRNE