【8月6日 AFP】シリアの首都ダマスカスにあるリハビリセンターで、歩行器につかまりながら慎重に義足を踏み出すアブドルガニ・ガヤナさん(48)。この時まで1年以上、歩いていなかった。

「自分の足でもう一度、立てるようになりたかった」。人が多いリハビリ棟を進むガヤナさんの横には、息子が心配そうについて歩いている。

 もう1人、すぐ横で注意深く見守っている人物がいる──義足の専門家だ。シリアで作られる義足をガヤナさんに試してもらい、その使い心地について意見を聴いているのだ。

 7人の子どもの父親であるガヤナさんは、シリア中部ハマ(Hama)県で開業する獣医師だ。「自分で自分のことができるよう、大好きな仕事ができるよう、全力を尽くしている」と語った。

 7年にわたるシリア内戦では、何万人もの人々が手や足を失った。ガヤナさんもそのうちの一人だ。再び歩けるようになることを目指し、ほかの負傷者数百人と共に、ダマスカスの身体リハビリセンターで無料の支援を受けている。

 ガヤナさんは昨年3月に両足を失った。家畜に予防注射を打ちに出かけた帰り道、バイクに乗っていたところ砲撃を受けたのだ。「けがをした後は、本当に絶望していた。自分で動けず、いつも誰かの手を借りなければならず……耐えることばかりだった」と言う。「どこかへ出かけなければならないたびに、息子に本当に申し訳ない思いがした」

■帰ってきた2本の足

 そのようなつらい思いの中、ある医師からダマスカスのリハビリセンターの話を聞いた。施設は、赤十字国際委員会(ICRC)の支援を受けて、シリア赤新月社(Syrian Arab Red Crescent)が運営している。

 AFPの取材にガヤナさんは、「ようやく最終段階だ。義足を装着して歩く練習をしている」と述べ、「1週間以内に再び自分の足で歩けるはずだ」と続けた。

 リハビリ棟の反対側にあるスロープでは、若い男性がレールをつかみながら義足で歩く練習をしていた。また、近くのベッドでは少年が横になり、片足は足首から先、もう片足は膝から先の義足の調整を受けている。

 隣は義肢の調整室だ。赤十字国際委員会の専門家の助言を受けながら、装具士1人とその助手が最終仕上げの微妙な調整を行っている。部屋の外には新しい持ち主の名前が書かれた、さまざまなサイズの義足や義手が並んでいる。

 世界保健機関(WHO)の報告によると、シリアでは昨年、8万6000人が手や足を失っているという。