【9月19日 AFP】今年のノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)の発表が見送られる原因となったレイプ疑惑の渦中にいる、ジャンクロード・アルノー(Jean-Claude Arnault)被告(72)の裁判が19日、スウェーデンの首都ストックホルムで開始され、被告は2つのレイプをめぐる罪状を否認した。

 フランス人のアルノー被告は、ノーベル文学賞の選考機関であるスウェーデン・アカデミー(Swedish Academy)の会員で女性詩人のカタリーナ・フロステンソン(Katarina Frostenson)氏の夫であり、ストックホルムで文化人や出版関係者が集まるクラブを経営。米国に端を発したセクハラ告発運動「#MeToo(私も)」が世界規模に拡大するまでは、ストックホルムの文化シーンにおける有力者だった。

 だが昨年11月、スウェーデンの日刊紙ダーゲンス・ニュヘテル(Dagens Nyheter)は、アルノー被告からレイプや性的暴行、セクハラを受けたと主張する女性18人の証言を報じた。

 アルノー被告は1人の女性に対するレイプ2件の罪に問われているが、19日の裁判でこれを否認した。今後の裁判は他のレイプ事件同様、被害者保護の観点から非公開で行われる。

 AFPが入手した起訴状の写しによると、アルノー被告は2011年10月5日、ストックホルムのアパートで「激しい恐怖」を抱いた被害者の女性にオーラルセックスと性交を強要した。また同年12月2日から3日にかけての夜にも同じアパートで、眠っていたこの女性をレイプしたとされる。有罪の場合、最高で禁錮6年の刑が科される可能性がある。

■「不快な親密さ」

 このスキャンダルは、アルノー被告と長年緊密な関係にあったスウェーデン・アカデミーを揺るがした。

 アカデミーの内部調査では一部の会員や、会員の妻や娘も、アルノー被告の「不快な親密さ」や「不適切な」振る舞いを経験していたことが明らかになった。

 日刊紙にアルノー被告を告発した18人のうちの一人で著述家のエリース・カールソン(Elise Karlsson)さんは、不安定な就労状態だった2008年、27歳の時の体験を昨年11月のAFPのインタビューで語った。「私はまったく関心を示していないのに突然、私のヒップに彼の手があるのを感じた。ショックを受け『私に触らないで』と言って、彼をひっぱたいた」。後にアルノー被告はカールソンさんに寄ってきて、この業界では二度と「仕事は見つからないぞ」と告げたという。

■沈黙の文化

 アルノー被告はスウェーデン・アカデミーの18人の会員と親しかった。

 1786年に創設されたアカデミーは伝統的に高潔さと思慮深さで知られているが、会議での決定は秘密のベールに包まれてきた。そうした権威あるアカデミーについて今回のスキャンダルで暴露されたのは、批判する人々がいうところの「沈黙の文化」や「身内びいき」、「古いマッチョな価値観」だ。

 今回のスキャンダルの対処法をめぐり、アカデミーは分裂。2018年のノーベル文学賞の授賞は来年へと持ち越され、アカデミーは再建を試みている。(c)AFP/Gaël BRANCHEREAU