【8月14日 AFP】フランス・パリの歩道に試験用として設置された男性用の公衆小便器「ユリトロトワール(uritrottoir)」――これまで、この公衆小便器が冷笑を買うことはあったが、このほど高級住宅地に設置されたことから、怒りを募らせる住民たちも現れ始めた。

 上部の赤い箱が特徴的なユリトロトワールは、環境を考慮した設計で、水を使わないため乾燥しており、悪臭もないという。仏工業デザイン会社「ファルタジ(Faltazi)」によると、内部には水の代わりに簡単に堆肥となるわらが詰められている。

 ユリトロトワールがパリに初めてお目見えしたのは今年の春。市内の3か所に設置された。しかし今回、4つ目がノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)に近い高級住宅街のサンルイ島(Ile Saint-Louis)に設置されると、住民から強い反発が起こった。

 住民のフランソワーズさんは、「見た目の悪い」ユリトロトワールが自宅近くにあることに憤りを感じると話す。3年前からサンルイ島に住む写真家のグレゴリーさんも「ユリトロトワールは嫌いじゃないが、ここに設置するのはまずい」と述べた。

 これに対し、パリ市は、設置は住民の要望に応えたものだと説明したうえで、ユリトロトワールの設置はまだ試験段階だと強調した。

■プライバシーはほとんどゼロ

 観光で米ニューヨークからパリを訪れているジョナサンさんは、上部に植物が生えたユリトロトワールを見ながら「ちょっと変わってるけど、用を足したい時に道端に直接するよりはましだね」と語った。

 道端のユリトロトワールで用を足す男性にとって、プライバシーはほとんどないも同然だ。ジョナサンさんは、設置された場所が人目につきやすいと指摘し、用を足すのに落ち着かない人もいるのではと感想を述べた。目の前を流れるセーヌ(Seine)川を観光客で満員の遊覧船が次々と通り過ぎていく。

 ユリトロトワールは3週間に1度、専用車両がやって来て中身を空にし、わらを取り替えて管理する。このため、車両が横づけできる場所に設置する必要があるという。

 ユリトロトワールをめぐってパリ市民らが抱く最大の不満は、男性のニーズしか考慮していないことだ。この点についてファルタジは、プライバシー上の理由で女性には個室が必要だとして、現存する公衆トイレを女性に開放する方針を示した。(c)AFP/Sami ACEF