陳さんは、子ども夫婦の自宅近くに200平方メートルの大きな家を借りて6年になる。

「定年退職をしてから、一気に十数年も歳を取ったような感じがする。ここは自分の家ではないし、自由もない」と、終始寂しそうだった。

 陳さんは定年前まではバリバリの会社員で、きれいな服を好み、身なりも常に整えている人だった。

 孫二人の世話をするため、今まで持っていた服を処分し、故郷を離れて北京に移り住んだ。陳さんは、北京で最も印象深い場所はと聞かれ、「近所の公園と野菜売り場」と答える。

「夫は半年ほど前に、ここでの生活になじめず、持病の高血圧が悪化して故郷に戻ってしまった。夫婦でずっと一緒にいると思ってたけど、こんなに歳を取ってからまさか別居するなんてね」。陳さんは独り言のようにつぶやく。

 天津師範大学(Tianjin Normal University)心理・行為研究院の呉捷(Wu Jie)副院長は、「子どもの面倒をみる責任の重さやストレス、リスクなどの要因で、高齢者の健康状態は悪化の一途をたどっている。心理的な負担が蓄積していけば、体だけでなく心の健康を損なう可能性もある」と説明する。

 現在、一部の高齢者たちが抱える心の問題については、「原因の多くは子どもの世話に関するものだ。『二人っ子政策』が本格的に実施され、心の病を抱える高齢者は確かに増えている」と話す。

 高齢者の心の病は、容易に家族や子どもにも伝わり、家庭内の人間関係にも影響を及ぼす。嫁姑間の問題も、激しくなる。

 呉副院長は、「若い人とは異なり、高齢者の場合は往々にして、体にも問題を起こす。動悸(どうき)や息切れ、胃痛、胃もたれなどの症状を頻繁に訴える人や、気分が悪くなって病院へ行ったが、検査結果には問題が見られないという人がいる。心理上の問題に起因している」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News