■ウェールズの森から

 植物が土壌から吸収するストロンチウムは、摂取した人の骨の中に取り込まれる。このストロンチウムを調べれば、植物がどの地域で育ったかが分かるわけだ。

 研究チームは、ストーンヘンジの歴史の初期に当たる紀元前3000年頃に埋葬された25人の頭蓋骨の断片を調査した。

 調査の結果、25人のうちの10人は、生涯の最後の少なくとも10年間を別の地域で過ごしていたことを、研究チームは突き止めた。

 考古学者の間ではストーンヘンジのブルーストーンがウェールズから運ばれてきたことがすでに知られていた。そのため、これら10人の他地域から来た人々のストロンチウムの特徴が、ウェールズ地方の植物相について知られている特徴と合致したことにより、この10人もウェールズから来たと考えることが理にかなっていると思われた。

 さらに研究チームは、火葬用のまきに使われた木材が、ストーンヘンジ周辺のウェセックス(Wessex)地域のものか、ウェールズの森林に特有の樹木のものかを識別することに成功した。

 これにより、ストーンヘンジに埋葬された人々の一部は英西部で火葬された後に遺灰が運ばれてきた可能性が高いと、研究チームは結論づけることができた。

 1920年代初めにストーンヘンジを発掘調査した考古学者らの報告によると、火葬された遺体は革袋などの有機物の入れ物に入れられていたという。これは埋葬のために遠隔地から運ばれてきたものとみられる。発掘された遺体は調査後、改葬された。

 ストーンヘンジを建造した先史時代の人々と、その文化を彩っていた信仰や儀式などについては、依然として多くが謎に包まれたままだ。

 だが、今回の最新の発見は「ウェールズ西部のプレセリ山地(Preseli Mountains)から来た人々が、環状列石を造るために使われたブルーストーンを供給しただけでなく、石とともに移動し、彼らもそこに埋葬されたことを示唆している」と、論文の共同執筆者で、オックスフォード大考古学部のジョン・ポウンセット(John Pouncett)氏は結論づけている。

 英考古学専門誌アンティクィテイ(Antiquity)に発表された最近の研究によると、ストーンヘンジには火葬墓が全部で150~240基あるという。(c)AFP/Marlowe HOOD