■倹約で得る「経済的自由」

「経済的自立と早期リタイア(Financial Independence Retire EarlyFIRE)」というライフスタイルの発祥地である米国では、環境保護から政治的理由、あるいは単なる個人的指向まで、倹約主義者たちの動機は多岐にわたる。熱烈に実践している人には中流層が多く、健康に留意したシンプルな生活を送っている。

 著作「ファイナンシャル・フリーダム(Financial Freedom、経済的自由)」を著したギゼラ・エンダース(Gisela Enders)氏によると、それは多くの人々にとって失業不安や、燃え尽き症候群に至るほど不健康なレベルのストレスなど「金銭にまつわる実存的恐怖」からの自由だという。倹約主義者たちは車や広いマンション、デザイナーブランドの服などにはほとんど関心を持たない。

「消費社会が、これなしではやっていけないと私に信じ込ませたがっているものすべてについて、本当に自分に必要なのか自問する」ことをエンダース氏は提起する。そのような自問がしばしば行動に踏み出すきっかけとなる。

 先のハートウィグさんは「倹約主義者が長期にわたって自分の稼ぎ以下の暮らしをするのは、経済的自立を獲得するためであり、最終的には具体的な夢や希望を実現するためだ」と語る。この道を目指す志望者への支援リソースは豊富にあり、禁欲生活の初心者が目標を達成する上で金もうけの天才である必要はないと言う。

 ハートウィグさんも、気が向いたときには金融商品や不動産への投資法の指導役を買って出ているが、その対象者は彼が趣味と呼んでいるその特権に見合う支払いができる人のみだ。

 同じ志をもった人々が定期的に集まるコミュニティー会議「フィナンシャル・インディペンデンス・ウィーク(Financial Independence WeeksFIWE)」もある。会議の主催者はかつてドイツに住んでいて、2人の子どもを連れてルーマニアに移住したカップルだ。ノエルティンさんによると、この集まりには多いときで25人が参加している。