【7月27日 AFPBB News】盆踊りのやぐらの周りを、浴衣姿の猫や猿が踊っている。フクロウやライオンもいる。でも朗らかな民謡は聞こえない──。あまりの暑さに、白昼夢を見ているわけではない。

 浴衣姿で踊るのは、顔を動物のお面で覆い隠した善男善女。専用のワイヤレスヘッドホンを装着しているため、盆踊り大会につきものの歌声や太鼓の音はない。やぐらを囲んで振りもばらばらに躍る様子は、何かの儀式かおとぎ話の世界のようにも見える。この一風変わった「ネオ盆踊りー動物仮面舞踏会ー」が27日、東京・大田区蒲田で開催され、参加者は真夏の夜の夢の一部に加わった。

 企画したのは、専用のワイヤレスヘッドホンを用い、外には音楽が漏れない状態でダンスを楽しむ「サイレントフェス」というイベントを全国で展開しているイベント企画会社の「Ozone」。住宅密集地の屋外という環境に配慮し、参加者だけがDJの操作する音楽を聴くことができる。しかしはた目には、無音のまま思い思いに体を揺する集団は、かなり奇妙に映る。

 参加者は、持参した動物のかぶり物か、主催者が用意した10種類の動物のお面を選んで着ける。単なるコスプレではなく、意味があるという。「死者を供養する行事である盆踊りに、人間だけでなく、人間の経済活動で失われるすべての生き物を思い、命を感じる日にしたい」と同社の雨宮優(Yu Amemiya)代表(26)。

 今回初めてサイレントフェスに参加した都内在住の会社員、樫原ひで子(Hideko Kashihara)さん(38)は、「ヘッドホンを外して眺めるとすごくシュール。やってる本人は楽しい」と象のお面を着け直した。28日は台風接近により中止。(c)AFPBB News